2003.8.26

脳動脈瘤手術

武山高之

 

西村さん、たまには脳ドックを受けたほうがよいでしょう。胃や大腸の検査と同じで、有効だと思います。胃や大腸検査の場合でも、

「もし、進行した癌が見付かったら、打つ手がないので止めておこう」

ということにはならないでしょう。脳の場合も同じです。

 

確かに、脳や心臓の手術は、胃・大腸の手術に比べて危険を感じます。手術自体の失敗の確率は胃・大腸より高いでしょう。しかし、成功した後は、正常な生活ができるようです。

 

 今にして思えば、亡くなった義姉は軽度な頭痛があり、予兆現象があったようです。しかし、義弟(末弟)の場合は、本人には全く症状がありませんでした。単に遺伝的に瘤がある確率が高いというだけの情報で、検査して、患部が発見されました。

 

これだけで、危険を伴う脳の手術を決断するかという点が問題でした。高齢者の場合はいざ知らず、5060歳なら手術した方がいいのではないでしょうか。その程度に、今の医学レベルは信頼できると思います。

 

 我が家の場合は、もう一人の義弟が群馬大学病院の耳鼻咽喉科にいて、相談しました。やはり、すぐに手術した方がよいという結論になり、大学のいい脳外の同僚を紹介してもらいました。幸い、瘤の程度は軽度で、場所も手術しやすいところでした。開頭して、特殊金属でクリップする手術も順調に行えました。

 

最近は、開頭手術せずに、カテーテルで塞栓物質を詰める方法も開発されています。脳腫瘍の治療には、ガンマーユニット(ガンマーナイフ)といって、分散した線源から発したガンマー線を一点に焦点を絞る方法で、開頭手術をしない方法も開発されています。義弟の手術は6年前でしたが、手術方法は日進月歩で進歩しています。

 

患者にとって恐ろしいのは、開頭・開胸・開腹といった外科手術ですが、カテーテル術・内視鏡下手術・腹腔鏡下手術、それに体外からの各種放射線照射(ガンマー線、X線、レーザー光線、衝撃波、マイクロ波など)により、外科手術に代わる治療法が多く開発されています。すべてが、工学と医学の協同によるものです。装置の開発が、次第にメスを使う外科医の領域を侵しつつあります。

 

カテーテルとか、クリップとかの医療材料も優れものです。私もカテーテルの開発は幾つか関係しましたが、体の内部の複雑な部位にヘビのようにクネクネと入っていく様子は驚きです。

ただ、細かい血管に入れるためには、カテーテルの径が小さくなり、強度が弱くなり、塞栓剤を流す流路が狭くなる問題があります。万一、カテーテルが千切れると、体内に残され、外科手術が必要になります。塞栓剤がカテーテル内につまると、手術のやり直しになり、患者さんへの負担が増します。

 

いくら治療法が進歩しても、脳や心臓の治療には危険はつきものです。

平凡な結論ですが、危険を最小にするため、腕のいい医師を探し、設備のいい病院で手術することが重要です。設備のいい大学病院でも、腕のよくない医師にかかると問題です。腕のいい医師でも失敗することもあります。万一の場合には、設備のいい病院のほうが、救命確率が高くなります。