2003.9.24

ICU(Intensive Care Unit

武山高之

 

 先日、68歳の誕生日を迎えた。70歳に垂んなんとする歳である。あと何年生きるか? 平均余命表をみると、16年後の84歳までである。そう長くはない。5つ下の家内はどうか? 25年後の88歳までである。10年近くは一人でいることになる。あくまでも、平均的な考えである。

ところで、我々は何処で死ぬのだろうか? 身内の死に方を見てみる。父と義父は70代後半と80代前半で、で急死した。母と義母は90歳を過ぎて、病院の普通病室で天寿を全うした。義姉は60歳過ぎで、ICUで急死した。いずれも、典型的な死に場所である。

 

 今回の話題は、ICUである。ICUとはIntensive Care Unit の略で、重篤な患者を収容し、循環・呼吸・代謝などを監視し、治療を施す救命救急の施設である。この中での患者の状態は、多数のコードとチューブに繋がれ、絡められた状態になっている。この状態をスパゲッティー症候群という。データが一杯採られている。

 

私は、長年にわたり、ICUで使う敗血症治療のための毒素(グラム陰性菌由来のエンドトキシン)吸着カラムの開発に携わっていた。これは成功し、今は後輩たちが利益を享受している。研究に着手したのが20年前で、完成したのが8年前である。

 

完成の少し前、最後の臨床試験として、20の基幹病院で、120症例のデータ収集と解析を行っていた。対象患者の原疾患は、ガンや心血管系の疾患が多い。新療法を適用しないと、生存率が30%程度である。これを60%程度にしようという狙いである。

 

データは多岐にわたり、極めて複雑である。何年にもわたり、このデータとにらめっこする毎日が続いた。貴重なデータである。何か疑問があると、今でも出して眺めている。眺めていると、治療効果を見るという本来の目的のほかに、いろんなことに気が付く。

 

治療対象患者さんの平均年齢は62歳である。日本人の平均寿命80歳よりもかなり若い。75歳以上の人は、全体の15%に過ぎない。平均寿命の80歳以上で死ぬような人は,ICUの対象にはなり難いのであろう。

 

最初に、このデータを纏めていたときは、私は58歳であった。そのときは、統計的処理をするにあたり、

75歳以上の患者さんは、治療対象としては、例外的高齢者ある」

として、効果判定から除外したい衝動にかられた。もっと若い人を救うことにこそ、この治療法の意義がある。自己回復力の少ない、高齢者には効果も少ないだろうと考えたからである。

 

しかし、今や我々も、その例外的高齢者に近づいていることを感じる。

我々も、平均余命で予測される84歳以上で死ぬときは、普通病室で最後を待つことが多いだろう。あまりICUのお世話にならないと思う。

不幸にして、まだ若い今、重篤な病態になると、ICUに入り、救命の治療を受けることになるのだろうか。 

 

この臨床データのもう一つの特徴がある。対象患者の70%以上が男性であることである。敗血症の患者だけが、年齢構成が違うことも考え難い。ICUに入るのは、60歳代の男性で、ガンや心血管系を患った患者が多いということになりそうである。

 

これと対照的なのが、老人介護施設である。母や義母の介護をお願いした施設を訪問すると、入居者の4人に3人は、おばあさんであった。四国の山間部にある私立病院を訪れたことがある。入院患者のほとんどが年寄りである。しかも、ここでも女性が圧倒的に多い。

 

しっかりした統計データを調べたわけではないが、男は60代から70代で、ICUの世話になるような、急に進行する病気で死ぬことが多く、女は老人施設で90歳くらいまで長生きし、徐々に弱ってゆくことが多いのだろうか。

 

いろいろ考えさせられるデータである。「何故だろう?」「どうしたら、良いのだろう?」 医師にも聞いたことがあるが、明確な回答はない。皆さんも一緒に考えてみてください。

 

個人差も大きい問題だから、互いに負けないように、頑張りましょう。