イタリア旅行記                 5月2日  伊藤一男
 
 去る4月の中頃、家内と共に12日間のイタリア旅行熟年ツアーに参加しました。
 イラク戦争と新型肺炎騒ぎが重なり、ツアーの成立が危ぶまれましたが、世の中に
は結構物好きな人もいるようで、辛うじて成立。予定通り成田空港から出発というこ
とになりました。いつも長蛇の列でイライラする出国審査も、お陰様でガラガラ。所
在なさそうな審査官の姿なんて、いまだかつて見たことがありません。
 
 さて、そのイタリアですが、まずは北の玄関口ミラノを皮切りに水の都ベネチアへ。
次いで花の都フイレンツエから南下して古都シエナへ。さらに南下し、一旦ローマに
寄ってからポンペイ遺跡見学。ナポリ港から高速艇に乗って、お目当てのカプリ島へ。
そこに2泊してソレント経由で再びローマという行程でした。
 
 イタリア各地の観光地は、さすが日本人と米国人は激減しているとの現地ガイドの
説明でしたが、陸地続きの他のヨーロッパ諸国からは観光客がどっと押し寄せて、ど
こもごった返していました。
 今回のツアーのハイライトは、何といってもカプリ島、とくに「青の洞窟」を満喫
できたことでした。
 イタリア観光にかけては諸先輩がたくさんおられますので、以下は後追いの旅行記
の一部です。
 
1)カプリ島の「青の洞窟」潜入記
 
 初代ローマ皇帝アウグストゥスがこの島をいたく気に入って、10年間も住み着い
てしまったといわれるのがこのカプリ島。東西4キロ、南北2キロ程度の小さい島で
すが、周囲はほとんどが断崖絶壁で囲まれ、現在は高級リゾート地として知られてい
ます。島の西北部の絶壁の下にかの有名な「青の洞窟」があります。
 ガイドさんの事前の説明では、洞窟に入れる条件はかなり制約的で、入り口が狭い
ので風が穏やかなこと、干潮時であること、天気のよい午前中であることなどであり、
あなた方が入れる可能性は五分五分だと脅され、日頃の行いの余程よい人しか入れま
せんと言われました。そういえば、成田から同じ飛行機に乗り合わせたある日本人の
あばさんは、カプリ島に4回行ったが未だに洞窟には入ったことがないとぼやいてい
ました。
 
 さて、いよいよその当日です。前日は曇っていましたが、朝起きてみると何たる幸
運!無風快晴だったのです。お互い「天気がいいのは自分のせい」と、家内と言い張っ
ていましたが、とにかく幸運を神に感謝しました。ガイドさんにせかされながら、港
から定員20人足らずのモーターボートで洞窟の入り口付近に着き、さらに船頭を含
めて5人乗りの手漕ぎのボートに乗り換えて狭い入り口へ。辛うじて一艘がやっと入
れるスペースしかありません。船頭が洞窟に張られたチェーンを手繰りながら誘導し、
全員が船底に仰向けになって、「イチ、ニのサン!」で入りました。とてもスリリン
グでした。
 
 洞窟の内部は薄暗く、入り口から差し込む微かな光だけ。海水が不思議なほど透明
な青色に輝いているのです。わずか5分足らずの見物でしたが、海水と光が織り成す
スペクタクルにすっかり魅了されました。
 
2)陽気なイタリア人
 
 噂通り、イタリア人は底抜けに陽気ですね。とくに南へ行くに従ってそれが増幅さ
れるようです。カプリ島の現地ガイドは典型的なプレイボーイ。白髪混じりのいい齢
のおじさんですが、片言の日本語を駆使しながら大きなゼスチャーでわれわれを誘導
してくれます。狭い島のなかでの観光業ですから、お互い毎日会っている同業の仲間
に対しても、すれ違い様に「オーイ!元気か」とか、土産店の若い女性店員にも「マ
リア!アモーレ!」などと大声で呼び掛けるのです。
 
 ベネチアの現地ガイドもよかったですよ。彼女は20代の胸の豊かな金髪美人。し
かも驚いたことには、彼女の日本語はわれわれ顔負けの流暢そのもの。ハンドバッグ
代わりにルイヴィトンの小さなリュックを背中に引っ掛け、実にカッコいいスタイル!
天然のカールした長いまつ毛と透き通るような青い目、形のいい高い鼻。横顔がとく
に美しい。思わず「アモーレ!」と叫びたくなるような衝動に駆られた、と同行の熟
年紳士がため息を漏らしていました。
 
 ローマの観光バスの運転手も知っているだけの日本語を並べて笑わせ、運転しなが
らも同乗の日本人添乗員に盛んに話し掛けていました。
 観光業という仕事柄、そういうパーソナリティに富んだ人が自然に集まったとも言
えなくないが、総じてイタリア人は陽気なようです。
 
 翻って、われわれ日本人はどうでしょうか。帰りの成田空港からの電車の中の乗客
は、目をつむっている人も多く、一様にまるで能面の表情です。まさに動と静、陽と
陰。日頃あまり感じたことはなかったのですが、イタリア帰りということもあったせ
いか、余りにも彼我の格差が大きいことを改めて思い知らされました。
 
3)日本は観光先進国になれるか?
 
 いつ訪れても、人を魅了してやまない観光立国イタリア。ローマ、ベネチア、フィ
レンツエはもちろんのこと、中世をそのまま残した古都シエナ、ポンペイ遺跡など、
街そのものが博物館/美術館であり、観光都市としての条件を備えています。それに
加えてレオナルドヴィンチやミケランジェロをはじめ無数の芸術作品が遺産と
して残されていますので、現代のイタリア人は極端な話、何もしなくても観光客を受
け入れながら食っていけるのでしょうね。うらやましい限りです。
 
 ところで、わが国の小泉総理も昨年の施政方針演説のなかで「観光立国」を掲げ、
際立って少ない外国人観光客を倍増したいと、その具体化に走り出しました。果たし
てうまく行くのかな?
 観光立国としての日本の課題はいろいろありましょうが、大きな都市でも我が物顔
で突っ立っている電柱とクモの巣のような電線が実に目障りなこと、旧市街でも建築
物がアンバランスでめちゃくちゃ。例えば、京都タワーなど、見るも気恥ずかしいと
思いませんか?それに新しい京都駅も古都には相応しくないと思います。
 
 海外に誇れる美しい日本を再生するのは、容易なことではありません。国も地方自
治体も過去のしがらみにとらわれることなく、思い切ってシステムを変革することが
大きな課題でしょうね。それに、もっとも困難な挑戦課題でしょうが、外国人をフラ
ンクに迎え入れることができるように、日本人の資質を改革する必要があるのではな
いでしょうか。
 
 以上、イタリア旅行で感じたことを記しました。
 アモーレ、イタリア! アモーレ、ジャッポーネ!