2003.7.31

MRIによる脳血管瘤検査

武山高之

 

 平成8年の夏、家内の姉がクモ膜下出血で他界した。脳血管瘤破裂である。

 

家内は6人兄弟姉妹である。脳血管瘤は遺伝的要素があり、兄弟姉妹は一度検査したほうがよいとのことであった。確率的には、残された5人の兄弟姉妹のうち、一人は血管瘤を持つものがあるとのことであった。幸い親戚に脳神経科の病院を経営しているものがあり、まだ悲しみも癒えぬ間に、全員が検査を受けた。そうすると、弟に一人血管瘤が見付かり、手術を受け、事なきを得た。

 

 その際、私もついでに検査してもらった。MRアンギオ検査である。アンギオ検査とは血管造影検査のことである。アンギオ検査でよく知られているのは、心筋梗塞に関係して冠状動脈の閉塞をみるアンギオ・カテーテル検査である。この場合は、X線が用いられる。

 検査台の上に寝て、台ごとトンネルの中に入れられる。磁界装置の発するうなり音と閉塞性が少し気になるが、大したことはない。試験は20分くらいかかったと思う。

 

ただ、これだけのことだが、老人には嫌われるらしい。90歳を越えて義母が脳梗塞で倒れ、何度もこの装置の世話になったが、閉塞性について文句を言っていた。

 

 複雑に分岐した脳血管の鮮明な画像が得られた。医学会では、見慣れた像であったが、自分の脳血管を見た感動はまた別ものである。幸い、我々夫婦は正常であった。これで、5.6年は大丈夫だということであった。昨年、義姉の7回忌を行ったので、もうそろそろ次の検査をしたほうがよいだろうか。

 

20年ほど前に、私の会社でもMRI(核磁気共鳴画像診断)装置の事業をやっていた。アメリカの製品を輸入し、重電機メーカーと一緒に、国内市場に販売していた。当時は、先端的でよく売れたらしい。しかし、競争が激しくなり事業は収束に向かった。私が担当したのは、前任者に引き継いだ事業の収束と合弁会社の清算であった。

 

MRIはX線CT(X線コンピューター断層撮影法)と共に、20世紀を代表する診断装置である。X線CTは30年ほど前に、X線工学・物理学、コンピューター技術、フーリエ変換などの数学理論を総合して開発された。ノーベル生理・医学賞の対象になり、イギリスの技術者と医学者が受賞した。技術者は博士号を持たないクリニカル・エンジニアであり、論文もあまり書かなかったらしい。田中耕一さんのような人であった。

 

MRIの理論は、X線CTよりさらに複雑で、論文を読んでも、私には理解できなかった。わが社では、東大の応用物理出身者と数理工学出身のコンピューター技術者が担当していた。ともに、少し変わったところもある秀才であった。

 

MRI装置は、超伝導磁石が使われるようになって、大進歩したといわれる。MRI装置の使い方は、X線CTと同様に組織の断層写真を撮る方法と血管造影法がある。私が受けた検査は後者であり、造影剤を使う場合と使わない場合がある。新しい造影剤として、金属内包フラーレンの研究もなされている。

 

自分の脳の中を見てみるのは感動的である。皆さまも一回は調べてみては、如何ですか。