腸内ポリープを取る

武山高之

 

 定期検診で潜血反応が出て、大腸内視鏡検査をした。横行結腸に3つのポリープが見つかった。うち1つは、長さ1cm・幅5mmで、組織検査の結果は5段階評価の3~4で前癌状態なので、取ったほうがよいと言われた。2年半前の検査では、5mm径くらいのものが1つあっただけである。これは、その数年前からあり、大きくなっていない。今回、取ったほうがよいと言われたのは、2年半のうちに成長したものである。「今、見つかって、あなたはラッキーだった」と言われた。

 

 ドクターのパソコンを覘くと、巨大なポリープがあった。さらに、「放っておくと、こうなりますよ」と、他の患者さんの癌状態の映像写真を見せられ、脅された。大きさを聞くと、前述のごとく、そう大きくない。しかし、拡大された写真を見ると恐ろしくなり、すぐに取ってくださいと頼んだ。

 

 先日、我が家の庭に咲いた貧弱な赤いバラをデジカメで撮り、パソコンに入れて拡大したら、近所にある通称チバリーヒルズの大邸宅街での〈オープン・ガーデン〉で見せてもらった巨大輪バラに負けないくらい、見事になったことを思い出した。パソコンは物事を誇張するのに便利である。

 

手術は内視鏡手術であり、入院は不要である。簡単な手術であるが、患者の〈同意書〉が必要という。いろいろ書いてある。分りやすく要約すると、「放っておくと、癌になり、切開手術が必要になるかもしれない。したがって、内視鏡手術を勧める。しかし、簡単な内視鏡手術とはいえ、手術なので危険は付き物である。最悪の場合は、腸穿孔さらに腹膜炎の危険性が伴うが、同意するか」という内容である。 

 

私は敗血症治療カラムを開発してきたので、腸穿孔から腹膜炎を起こす可能性は知っている。さらに、腹膜炎は敗血症に発展し、ショックにより、死にいたる可能性もないではないことも知っている。実際、新米の医師が内視鏡を使うと、検査だけでも腸壁を突き破ったという話を聞いたことがある。いわんや、手術では、深くもぐりこんだポリープを取ろうとすると、腸壁に穿孔する可能性もあるらしい。腸壁の厚さは思いのほか薄い。

 

幸い、私のかかっているクリニックは上手だという評判である。当日、看護士さんが、

「同意書は持ってきて頂けましたか」と聞く。「失敗したら、死ぬかもしれないが、恨みっこなしよと書いたやつでしょう」というと、「まあ、そんな!」という優しい言葉が返ってきた。

 

 アイソマーの皆さんでも、内視鏡検査や手術をされた人は多いと思うが、前日から食事制限をして、当日は下剤を飲んで、トイレに10回くらい通って、胃の洗滌をする。さらに、ポリープを取ったり、生検をしたりすると、数日間の食事制限が続く。楽ではないが、切開手術を考えれば、大したことはない。手術費用はしめて4~5万円である。手術だから、生命保険も下りるらしい。

 

 ポリープを取った後の映像も見せてもらったが、3つとも、きれいに取れていた。一つは、焼きとったという。一番大きいのは、切った後を金具で止めたという。その金具は、そのうちに、内皮とともに脱落するそうである。

 

 話は変わるが、私は週に1回、英会話教室に通っている。そこで、この手術のことを英語で話してみたが、大変苦労した。長年、メディカル事業を担当してきたので、病気のことや体のことは話せると思っていた。しかし、しばらく使わないうちに、簡単な単語も忘れて、思い出すのに時間がかかる。痴呆の試験をしているようだ。

 

Endoscope Operation(内視鏡手術)で、polypを取った」というと、若い先生は、

Endoscopeって何だ」という。長く日本にいて、英語の新しい医学用語を知らない。

polypとは、もともとサンゴの粒々だ」という。これは、私も知っていた。

「まず、colon(大腸)をcleaningして」と言いたいが、colonがすぐには出てこない。

cleaningでなく、purge(洗滌)だ」と訂正される。

red purgepurgeか?」と聞くと、

red purgeって何だ」という。若いアメリカ人はred purgeを知らない。

 

「肛門からfiberscopeを入れ」と言いたいのだが、anusが出てこない。outletとか言っているうちに、やっとanusが出てきた。〈横行結腸〉にいたっては、正確な専門用語を知らない。たとえ言っても、仲間の誰も分らない。状況を説明しているうちに、何処にあるか分ったようだ。病気のことを説明するのは、苦労する。英語に堪能な人には、バカのような話だろうが。

 

その日の会話は、いろんな病気のことで終わった。外科医が一人いた。面白かったのは、外科医のfirst operationのことであった。どんな外科医でも、生涯において、必ず最初の手術を経験する。これに当たった患者は、不運である。この機会は大学病院に多い。大学病院に行くと、実験台にされて、迷惑するか? しかし、悪いことばかりではない。機器が整っており、スタッフも多いので、失敗しても回復の可能性は高い。

 

内視鏡手術をしたのは、昨日である。まだ、おかゆを食べている。「二、三日は、肉体労働や運動はしないほうがよい」ということである。エネルギー不足で、考える仕事をする気力も出ない。ということで、駄文を書いている。

 

歳をとると、多くの人が〈ポリープの内視鏡手術〉をすると思う。まだの人は、参考にしてください。統計学の本には、人間社会で無視できる確率は、百万分の1と言われている。内視鏡手術の危険性は、これより5~6桁高いだろうが、1cm以上のプリープが出来たら、早く取ったほうがよい。