2004.9.7

西 村 三千男 記

 

「苦境にあるヨーロッパの航空業界」

 

ヨーロッパの国々を代表する航空会社やその拠点である空港が経営不振にあえいで

いる。ヨーロッパに限らず最近の世界の航空業界は、米国から始まった果てしなき過

当競争と数年来のテロや新型肺炎による需要低迷、最近では燃料油の価格高騰、それ

らの結果としての経営不振が常態化している。航空会社の経営不振はハブ空港の投資

の遅れにも繋がってくるようである。

 

先に本HPでアリタリア航空とマルペンサ空港について少し記述した。本稿ではル

フトハンザドイツ航空、KLMオランダ航空、サベナベルギー航空、英国航空その他

に関する雑多な情報を列記する。

 

ルフトハンザドイツ航空とフランクフルト空港

 あのルフトハンザドイツ航空も経営不振が続いている。使用機材が老朽化しても更

新投資が出来ないようである。乗客座席に備付けの自社のPR月刊誌等も手垢でドロ

ドロに汚れても取替えない。往時のルフトハンザ流からも、Alles in Ordnung のド

イツ流からも信じられない光景である。人気離散して旅客数の減少した路線にはカナ

ダ製のCRJ−200、−700等を投入して経費節減をはかっている。これらはジ

ェットコミューターの名機と云われているが、座席数が少ないだけでなく、何分にも

座席が狭く機内持ち込み荷物も極端に制限される。

 

 ルフトハンザ航空の本拠地はフランクフルト空港であるが、発着便の大型表示板を

いまだに電子化出来ないでいる。金属板がパタパタと入替わる機械式である。ピーク

時間帯には出発便だけで1時簡に40〜50便もあり、パタパタは痛々しいほどに超

繁忙である。

 

KLMオランダ航空とアムステルダムスキポール空港

 意外に思われるかもしれないが、KLMオランダ航空は現存する世界の航空会社の

中で設立が最古(1919年)である。それが遂に本年5月にエールフランスに買収

されて経営統合から吸収合併へと進むことになった。路線網の規模の点で太刀打ち出

来なくなったのだろうか。

 

 スキポール空港は海抜マイナス1メートルを特徴としている。アムステルダム市の

中心から近くて至便であるが、騒音問題から施設の拡張は制約が多い。一方フランス

は戦略的に、段階的に、シャルルドゴール空港を大拡張しようとしている。TGV新

幹線を空港地下に乗入れ、そのTGV新幹線網を近隣国にまで延伸してベネルックス

や英国からもシャルルドゴール空港へ集客しようと狙っている。既にTGVはブラッ

セルまで供用しており、ハーグまでの延長新線を建設中、将来的にはアムステルダム

までも延伸が計画されている。

 

エールフランス航空とシャルルドゴール空港

フランスはTGV新幹線といい、シャルルドゴール空港といい戦略的にヨーロッパ

の交通の覇権を握ろうとしているやに見える。シャルルドゴール空港は円盤のような

メインターミナルビルと円盤のようなサテライトビルたちで構成されている。現在は

ターミナルビルは1と2が供用されているが、広大な用地には現在規模の3〜4倍に

も拡張出来るそうだ。

 

 それにしても、エールフランス航空はストライキが多いね。運悪く航空会社のスト

ライキに出くわすと時間のロスと心労は挽回不能となる。避けたいね。

 

旧サベナベルギー航空と旧スイス航空

SABENA=Such A Bad Experience Never Again とそのサービスの悪さを揶揄

されてきた。実はKLMに次いで古い社歴(1919年)を有するが、サービスも経

営もいつの時代も一流ではなかった様だ。国威を維持するために、ベルギー国家が経

営支援してきたのがEUのルールで禁じられて苦しくなった。旧スイス航空の傘下に

入り経営再建中のところ、下記するように旧スイス航空が倒産してサベナも連鎖倒産

してしまった。

 

 旧スイス航空は事故を起こさない安全性と全般的な信頼性とで常に世界の航空会社

の中でトップグループの一社であり続けていた。それが例の9.11同時多発テロ直

後の2001年10月に倒産してしまったのには部外者の誰もが驚いた。現存するス

イスインターナショナルエアラインズは2002年にローカル路線を飛んでいた子会

Cross Air を核に設立された新社である。

 

英国航空とロンドンヒースロー空港

 かって英国航空といえば「サービスを忘れたサービス業」の典型のようなエアーラ

インであった。機内でも地上でも劣悪なサービスが有名であった。それが1990年

頃を境にして見違えるような優良サービスを提供するようになった。事情は知らない

けれど、サービスや顧客満足度を重視する優れた経営者が出現したのであろう。

 

 今年の5月の連休にオランダ人の旧友が来日したが、航空運賃を節約するために往

復ともにロンドンヒースロー空港を経由して英国航空を利用した。その往路も復路も

共にヒースロー空港で乗継トラブルに遭遇したそうだ。ヒースロー空港はターミナル

ビルが1から4までやや無計画に配置されていて、ターミナル相互間の往来もかなり

不便である。信じ難いことに発着便の情報システムがターミナル1〜4の間で相互に

連結されていなくて、いちいち電話で確認を要するのだという。トラブルの詳細は聞

いていないが、出発時刻間際になって出発予定のターミナルビルが変更となり、英国

航空の女性地上スタッフの誘導で別のターミナルへ走らされた。復路もほぼ同じトラ

ブルと言うから類似のことが日常的に頻発しているのかも知れない。

 

スカンジナビア航空とコペンハーゲンカスタラップ空港

 SASスカンジナビア航空は我が最愛のエアライン3社のうちの一つである。北欧

3カ国のコンソーシアムである。1954年に果敢に北極ルートを開発したことが特

筆される。それまで東京〜ヨーロッパ間は南回りで飛んでいたのを、北極点を経由す

ることで大幅に時間短縮に成功した。このルートが開発された結果、給油のための経

由地としてのアンカレッジ空港とヨーロッパの玄関としてのコペンハーゲン空港が長

年に亘り大繁盛することになった。

 

 その後1970年代後半にシベリアルートが自由化されて主流となり、北極ルート

もアンカレッジ空港もその重要性をすっかり失った。コペンハーゲンもヨーロッパの

主玄関としての座をロンドン、パリ、フランクフルト等に譲ることになる。JALも

コペンハーゲン乗入れを止めてしまった。

 

 今日ではスカンジナビア航空は北極ルート華やかなりし頃の勢いは無くなったが、

それでも独特の存在感を示している。JALの飛んでいない東京〜コペンハーゲン間

にジャンボジェットではないがA340を毎日就航させている。

 

                              (おわり)