「アンチョビ」              中村省一郎 4-30-2004

 

武山さんの「著効の始めに「アイソマー諸氏の中には...」があって、ひょっとすると自分のことを言われてるのかとも思ったが、いわしを食べろと人に勧めたことはないので、そうではないことに決めた。

 

ところで鰯といえば思い出すことが幾つかある。その一つにアンチョビがある。塩漬けの小さなアンチョビをオリィーブ油とともに小さな缶詰めにしたのを売っていて、これを白いご飯にのせて食べると、塩辛とよく似ていてじつにうまい。缶のなかには、アンチョビが結構ぎっしり詰まっているが、一説によるとアンチョビよりもオリィーブ油のほうが高価なので、オリィーブ油を節約するためにアンチョビを出来るだけつめるのだそうだが、本当だろうか。とにかく、これだけを見てアンチョビは小さな鰯の種類かと思い込んでいたが、バルセロナの市場を散歩していて、丸干しくらいの乾した塩漬けのアンチョビに出くわした。汚らしくみえたので躊躇したが、200gくらい買うことにした。日本では何十年も前にやっていたように、古新聞にくるんでくれたのには、またおどろいた。ところがコロンバスに自宅にもどってから、例のご飯にのせる食べ方をしてみたところ、缶詰めのアンチョビよりもはるかにうまかった。それ以後同じものを、旅行のたびに探すのだが見つからない。

 

どうして作るのか未だによくは分らないが、塩漬けにしたアンチョビを発酵させていることにちがいない。だから、日本でも鰯を同様に塩をしてから発酵させると、ほぼ同じものができるはずだが、日本では誰もこんな食べ方に気がつかなかったのであろう。

 

アンチョビと普通の鰯の違いはよく分らないが、カリフォルニアのモントレイにある水族館でアンチョビの群れを観察する機会があった。アンチョビは口を大きくあけたままで泳ぐ。口に出来るだけ大量の水を流しこんで、入り込んでくるプランクトンを集取するらしい。とにかく、驚いたのは開いたその口の大きさであった。あごががぱっと下に開き、口の直径は体の二倍にはなると思われた。鰯もこのくらいおおきな口をあけるかどうかは分らない。

 

武山さんの記事にもどるが、鰯にしてもアンチョビにしても食べたら体にどう効くかを調べるのは容易ではないことは同感である。二重目隠し法も必要だが、実験の結果にはばらつきが伴い、差異が有意か無意かを統計処理によって決めなければならない。私は機械実験の統計処理法も学生に教えなければならないが、楽しんでもいる。