2004.11.1

西 村 三千男 記

続「ポコポコ・イタリアーノ」

 

第11回 ユーロスターの本家はどっち?

 

 前回述べたように、イタリア国鉄FSの超特急は時刻表に ES (ES star/イーエス

スター)と表記されている。正式名称は「EURO STAR Italia」である。英仏海峡の海底

トンネル/ユーロトンネルを経由して London 〜 Paris 〜 Brussels 間を結ぶ「ユー

ロスター」とは別物である。

 

インターネット検索すると、2つの「ユーロスター」の夫々に関する情報は満載され

ている。先行供用したのはイタリア国鉄の方であるが、「euro star」の名称使用権は

英仏側に許諾されているらしい。イタリア側は ES に印をつけて ESと表記するが、

これを「ユーロスタースター」とダブって読まずに「イーエススター」と読ませている

のである。

 

両者の本家争いの経緯が、過日(2004.10.6)付け日経夕刊のコラム「世界

途中下車」に載った。フォト・ジャーナリスト櫻井寛氏の「ユーロスター・イタリア」

を原文のまま引用する。

 

 

『イタリアの誇る超特急の名が「ユーロスター(EUROSTAR)」である。

「え!英仏ベルギー間を走るユーロスターとまったく同じじゃない?」と、思ったが

よくよく見れば、そちらは小文字で「eurostar」。さてどちらが本家であろうか。

 

ロンドンのユーロスター社に問い合わせたところ、もともとはイタリアのフィアット

社が持つ商標で、‘94年開業の際、許諾を得たのだそうだ。一方イタリアのユーロス

ターは‘93年に誕生している。フィアット社は自動車メーカーとして有名だが、実は

鉄道車両メーカーでもある。初代のイタリア版ユーロスターは、何とフィアット製なの

だ。

 

 そこで考えられることは3社間に商標許諾の行き違いがあったのだろう。いずれにせ

よ、乗客にとっては2つのユーロスターがあるのは紛らわしい。結局イタリア側が折れ

る形で、小さくイタリアの文字が追記された。つまり「ユーロスター・イタリア」であ

る。

 

 そのイタリア版ユーロスターにミラノ中央駅から乗車した。最高時速は250キロ。

英仏ベルギーよりも50キロ遅いのだが、それにも増して魅力的なものがこちらにはあ

る。旨いイタリア飯を食わせてくれる食堂車の存在だ。発車するや否や、私は食堂車に

飛び込んだ。ランチタイムとあって、急がないとすぐに満席になってしまうからだ。

 

 「シニョール!」忙しくナイフ、フォークをテーブルに並べるスチュワードに背後か

ら声をかける。彼が振り返った瞬間、私は声にならない声をあげていた。「あ、ア、ア

ントニオ?」「シー(はい)、あなたは、ジャポネーゼ(日本人)?」

 

 それは今から10年前、ベニスからローマへと向かう超特急ペンドリーノの取材でお

世話になったスチュワードだった。当時の彼は、長髪で、長身で、ギリシャ彫刻をを思

わせる絵に描いたようなハンサム君だった。

 

 けれども10年の歳月は、彼を見事に太らせていた。かく言う私も堂々たる中年太り

である。「太ったね」「あなたも」と肩を叩き合う。ほどなくランチが始まった。まず

前菜に2種類のパスタ、続いてメインはビーフ、ターキーのチョイス。デザートはジェ

ラートまたはティラミス。これで25ユーロ(3400円)は安い。アントニオも太る

わけである。

                           (フォト・ジャーナリスト)』

 

                             (以下次回)