2004.10.

西 村 三千男 記

続「ポコポコ・イタリアーノ」

 

第9回 ヴェローナのバス

 

都会で路線バスを乗りこなすにはそれ相当の知識と経験が必要である。知らない都市

で路線バスに乗るには事前に予備知識を仕入れないと失敗するリスクが高い。それが初

めて訪れた外国都市であれば尚更のことである。下記するのは先般の旅行でヴェローナ

の路線バスに乗った際の少々珍しい失敗体験である。

 

私は東京で路線バスは殆んど利用していない。現在の住居が東急の電車網に近接して

いて何処へ出かけるにも電車が便利だからである。何かの都合でバスに乗ることになれ

ば大騒ぎして事前にインターネットで路線と時刻表を調べることになる。その私が京都

では路線バスを重宝に利用している。市街図とバス路線図が大体頭に入っているから失

敗することはない。私の名刺入れには何時でも京都のバス共通回数券が入っている。

 

 さてヴェローナでのバス体験に話を戻そう。まずブラ広場から発着する観光用のチン

チンバスで市内を一巡して全体を大雑把に観た。それから見当をつけて置いた幾つかの

スポットを徒歩で探訪して、カステルヴェッキオとその中にある市立美術館でその日の

観光を終ることにした。その後、国鉄FSポルタ・ヌオーヴァ駅へ行って翌日のミラノ

への帰路乗車券を購入しようとした。

 

駅まで歩いて20分程度である。周知の様にヨーロッパは何処でも流しのタクシーは

いないし、付近にタクシー乗場は見当たらない。バス停は直ぐ傍にあってバスは次々と

来ている。路線案内図はあったが券売機は無かった。バスを待つ地元の人らしきイタリ

ア人に「Biglietteria? 券売所は?」と尋ねると、「兎に角乗れ」とボディランゲージ

で答えてくれた。

 

バスの乗車券システムは日本国内でもその土地その土地で様々になっている。京都で

は概ね「後乗り、前降り」(誰でもが後ろから乗り込んで整理券を取り、前から降りる

際に精算する)となっている。東京では均一料金の「前乗り、後降り」(誰でもが前か

ら乗る際に精算し、後ろから降りる)と「前乗り、前降り」(乗降ともに運転手の目の

前でチェックされる)と上述の京都と同じ「後乗り、前降り」とが混在している。ドイ

ツ方式をデュッセルドルフの例で示そう。いわば自己申告制である。定期券や乗車券を

持っている人は後ろから乗り込んで自ら刻印機で刻印し、降りるときにもチェックを受

けない「後乗り、後降り」と乗車券を持っていない人は前から乗り込む際に運転手から

乗車券を購入する「前乗り、後降り」を併用している。時々、万一にも無賃乗車を発見

されると「極めて高いものにつくよ」との警告文がバス車内に掲示されているのを見か

ける。

 

 ヴェローナではどうであったか?親切そうなイタリア人に背中を押されるようにして

バスの後ろから乗り込んだ。デュッセルドルフのシステムを思い浮かべて、万が一にも

無賃乗車と看做されないよう、手に5ユーロ紙幣を持って運転席へ突進し「Stazione.

駅」と叫んだ。運転手は全く取り合ってくれなくて、結局不本意ながら無賃乗車となっ

てしまった。

 

駅で国鉄乗車券購入を済ませて、今度は事前に乗車券を購入して、正々堂々と?正規

の乗り方でバスに乗ろうと考えた。バス停にある券売機にコインを入れるが受け付けて

くれない。周囲の地元風イタリア人が駅舎へ行けと合図してくれる。駅の中にバス総合

案内所はあったが乗車券は売っていない。「Dove? 何処で」と尋ねると「Tabaccheria.

タバコ屋で」と答える。何故かバス乗車券はタバコ屋でしか買えないのであった。この

後もう一度、心ならずもバス誤乗と無賃乗車を繰り返してしまうのだが、情景が似てい

るので詳述するのは止めておく。

 

 どうも、ヴェローナではバス運転手に現金の取扱いをさせない仕組みらしい。路線バ

スのバス停に券売所(機)が無くて、運転手が現金を扱わないとすると、予め定期券か

回数券などを持たない旅客はどうするの?路線バスの車内で運賃の精算が出来ないシス

テムは私の理解を超えている。

                               (以下次回)