2004.10.22

ザルツカンマーグート

武山高之

 

 

ザルツカンマーグートはザルツブルブの近郊に広がるオーストリアの湖水地帯である。ついこの間、行って来たばかりのカナディアン・ロッキーの湖の多い地帯とも違う。4年前に訪れたイングランドの湖水地帯とも違う。

 

カナディアン・ロッキーの湖は山の中にある神秘的なエメラルドグリーンの色を湛えた湖でまわりに人家はほとんどない。

 

イングランドの湖水地方は、まわりに高い山はなく、落ち着いた色合いの町が控え目に点在しているように見える。まわりは羊の放牧地がある。羊の放牧地は牧草が短く、緑が浅いように見える。

 

今回、ザルツカンマーグートでは、ヴォルフガングゼーで遊覧船に乗り、モントゼーで『サウンド・オブ・ミュージック』ゆかりの教会を訪ねた。この辺りの、この季節の風景は、透明な湖とアルプスにつながる高い山、それにベランダや窓辺りの草花の吊り鉢に飾られた大きな三角屋根の木造の民家と深い緑のよく伸びた牛用の傾斜した牧草地があり、色合いのバランスが素晴らしい風景であった。それに、点在する古い教会建築もいいコントラストである。夏の牧草地には牛は少ない。緑だけが綺麗である。夏の間、牛は山の高いところに放牧されているそうである。

 

ヴォルフガングゼーの遊覧船の上で、まわりの景色をスケッチしてみた。緑系の絵の具が多く必要なのはわかるが、ピンクや黄色系の色が意外にたくさん要った。カラフルな世界であった。スケッチをしながら、隣の若い夫婦づれと話をした。アラビア半島のクェートから来たという。仕事は二人とも化学技術者だと言うので、同業だと握手をした。奥さんのスカーフは黒ではなく、ザルツガンマーグートの雰囲気に会った薄いピンク系であった。イスラムの人も皆がこんなスカーフをするようになると文明の衝突も無くなるのではないだろうか。

 

ヴォルフガングゼーやモントゼーのゼー(See)というドイツ語を聞くと、大学時代を思い出し、郷愁を感じる。ドイツ語を習い始めた頃、当時定番のように読まれていた副読本にシュトルムの『イメンゼー(湖)』という小説があった。

 

ザルツカンマーグートは景色の良い所であった。ここに住む人たちは、よその地を旅しても、やっぱり自分のところが一番と思って、詰まらないのではないか。

 

水と陸の組み合わせの風景は、イタリアのナポリ、トルコのイスタンブールと並ぶ景勝の地だという人がいる。ザルツカンマーグートの良いところは、イスタンブールと違って、町の中も綺麗である。