004.5.17

西 村 三千男 記

イワシ〜鰯〜鰮〜鰛

 

 武山さんと中村さんの「イワシ/アンチョビ問答」を読んで諸々のことを想い出し

た。自分にとっては懐かしい5題話を以下に列記する。

 

第1話 「鰯〜鰮〜鰛」

イワシの漢字は唯一「鰯」と思い込んでいたが、宍戸圭一先生が懐かしい工業化学

概論の講義で「鰯〜鰮〜鰛」を紹介されその意味と語源を解説された。宍戸先生の博

学と軽妙な脱線に私達はしばしば感銘を受けた。本筋の講義内容を忘れてしまった今

でも、脱線部分だけはよく覚えている例(天麩羅〜天婦羅〜から揚げなど)が幾つも

ある。

 

第2話 イワシ詰め

 高校3年時の櫟先生の英語の授業は充実していた。先生は「読み、書き、話す」全

てにご堪能だった。「スシ詰め」のことは英語では「イワシ詰め」と表現すると教わ

ったのも櫟先生だった。当時、いわゆる「オイルサーディン」を知らなかったので機

械的に記憶する外なかった。

 後年、欧州に駐在して出張先のスェーデンで、たまたま話題が「日本文化〜カミカ

ゼタクシー〜スシ詰め電車」に及んだ際、相手から「イワシ詰め」と云われて納得し

た。

 イワシ並び〜サミット並びはうまい表現ですな。

 

第3話 EPA〜エパデール

 イワシ油に含まれる多価不飽和脂肪酸のイサコペント酸(エイサコペンタエン酸)

は抗血栓、抗動脈硬化、抗高脂血症に効能があることはよく知られている。魚を多食

するイヌイットの人々の疫学調査から、心筋梗塞などが少なく、外傷すると止血しに

くいことを手がかりに究明された。

 日本水産と持田製薬で抗血栓薬「EPA delux = エパデール」が販売されているが、

その原料をご存知だろうか。10年以上も前のことであるが、勉強会でその開発者か

ら直接聞いた。「オイルサーディンを製造する際に、不飽和脂肪酸は劣化しやすいの

でイワシから油分を抽出して、オリーブ油やサラダ油と置き換えている.抽出したイ

ワシ油はそれまで廃棄していたが、これが「エパデール」の原料に活用されるように

なった.」と。

 従って薬効を期待できるのは加工前のイワシであって、有効成分の抽出残渣である

オイルサーディンを多食しても血栓は予防出来ないことになる。

 

第4話 武山さんのイワシ談義

 「獲れたてのイワシを指でさばいて海水で洗っただけでそのまま食すとマグロより

も美味」と武山さんに教わったことがある。アイソマーズの初期に年報が編集されて

いたが、その何号かの随想に書かれていたのでは?とバックナンバーを調べた。第2

号「味の思い出」に見つけたけれど「海水で洗っただけ」ではなく、ここでは「酢ヅ

ケ」となっている。ご本人に直接尋ねたら、両方共に経験されているそうだ。

 

第5話 三浦海岸の観光地引き網

 10数年前のこと、研究所員達とリクリエーションのために三浦海岸へイワシの地

引き網に出かけたことがある。知らなかったけれど、地引き網は大漁、不漁のアタリ

ハズレが激しいらしい。我々は思いがけない超ど級の大漁に恵まれたけれど、我々の

両隣も我々と同じポイントの前組も後組も殆んど収獲ゼロであった。我々の処理し切

れない大漁のオスソワケを不漁の全てのグループへ大きなポリペールに2〜3杯宛て

分配した。

 我々も不漁覚悟で出かけたので、漁があった時の準備をしていなかった。武山さん

の話をチラリと思い浮かべて、指でさばいたものを海水で洗っただけで食べた。三浦

海岸の海水は汚なそうで躊躇〜パスする所員も大勢いたけれど所長は不潔に強かった。

                            (おわり)