2004.4.30

 

武山高之

臨床検査

 

20年前から10年前の間、私は検査薬事業もやっていた。主に、アメリカから最先端の検査薬を導入し、国内で事業化する仕事である。先輩から引き継いだ業務である。この分野では、当時タンパク工学と遺伝子工学でノーベル賞受賞の革命的発明・発見があり、それに基づく、ベンチャー開発が盛んであった。

 

その後の変化について、調べてみた。身近な問題として、輸血検査、潜血反応、腫瘍マーカー3つを選んで紹介する。

 

 

最近、日赤で肝炎ウイルスおよび細菌感染の疑いがある輸血用血液が問題になっている。献血者の中にウイルスキャリアが0.06%いるという調査報告がある。もちろん、これらは検査により、撥ねられている。しかし、感染直後の献血者血液にはウイルス数が少なく、検査を潜り抜けるらしい。血液は製造工程でウイルスの不活性化を行っているが、それでも感染の心配がされている。

 

私たちも日赤とはコンタクトを持ったが、その時代に較べると、安全性は何桁も改善されている。現在使用している検査方法は、「核酸増殖検査」という世界最先端の技術らしい。非常に低確率であるが、それでも起こるのが輸血感染である。

 

 

次は、皆さんがお馴染みの便潜血反応による大腸ガン検査を考える。私も仕事では関係したことはなく、被験者の立場でのお付き合いである。昔はヘモグロビンの化学検査が行われ、肉や魚のヘモグロビンと区別できなかったため、食べ物制限があった。最近は、抗体検査のため、ヒトの血液以外は反応しないので、食べ物制限は無い。

 

問題は、痔など他の部位からの出血が多く、潜血反応陽性で癌の率は3%程度らしい。これを減らすため、がんを直接検査する抗体と磁気を利用する方法が最近報告されているが、実用性については、まだ確認されていないようである。

 

一番の問題はガンの見逃しである。ガンが表面に出ておらず、出血もない早期ガンの場合は、偽陰性率(見逃し率)が50%にもなるらしい。進行ガンでも、10%の見逃しがあるという。一番確かなのは内視鏡検査である。

 

 

3つ目は、人間ドックで行うガンの腫瘍マーカーによる血液検査である。これは、ガン細胞が存在すると、増える特別な物質を抗体反応で検出するものである。CEA(主に大腸ガン)、AFP(主に肝臓ガン)、CA199(主に膵臓ガン)、CA125(主に卵巣ガン)、PSA(主に前立腺ガン)がよく用いられる。このうち、CA19-9とCA125は我々が最初に日本に導入したものである。

 

モノクローナル抗体を用いたものである。現在では、40種類に増えている。腫瘍マーカー検査は、当初はガンのスクリーニングテストとしても、非常に期待されたものである。しかし、腫瘍マーカーは正常人の血液中にも存在するため、ある閾値を越えたら陽性と判断している。

 

ところが、早期ガンでは、ほとんど増加が見られないため、早期診断の役にはたたない。AFPの早期ガン陽転率50%に過ぎない。CA199でも70%に留まる。そのため、腫瘍マーカーは補助的診断法の位置に留まっている。

ただ、PSAによる前立腺癌検査は有用性が高いらしい。PSA検査を受けましょう。