著効

武山高之

 

 アイソマー諸氏の中には、漢方薬や健康食品が好きな人がいる。イワシを毎日食べろと勧める人もいる。健康のために良いに違いない。イワシは私も好きだから、よく食べる。

 しかし、「本当に効いているのか」と証明しようとすると、簡単ではない。

 

自分だけの経験ではなかなか分らない。本当の効果を証明するには、多数の症例を用いたDouble Blind Test によらなければならない。この方法は以前、日本語では二重盲検法と呼ばれていた。しかし、差別用語とみられ、最近は二重目隠し試験と呼ばれる。

 

患者など被験者を二つのグループに分け、片方に新しい療法を、もう一方に従来の療法を施して、効果を判定する方法である。この際、医師などの研究者にも、被験者にも、どちらの療法を使用したかを目隠しにしておくので、この名前で呼ばれている。遅効性の漢方薬や健康食品では、有意差をだすためには、一般に数百人以上の多人数による長期間のテストが必要である。

 

厳密に有効性を証明するのに、大変な努力が必要になる。しかし、実際には、かなりの物が、厳密に有効性を証明されていない状態で使われている。害がなければ、良いだろう。

 

一方、前に報告したICUの重篤患者の例のように、手遅れの症例も多い。その場合は、薬石効なく、「無効」になる。

 

我々が扱う治療法は、100人程度のテストで、有意差が得られることが多い。このような臨床試験をしているとき、「手遅れだと思われる症例」で、魔法のように効くことがある。家族はもちろん、医師でさえ、「残念ながら、手遅れです」と言っていた例である。

 

「血圧は極端に低く、呼吸も厳しく、意識はない」という重篤な例である。このような患者さんでも、治療後一時間も立たずに、意識が戻り、血圧・呼吸も目に見えて回復する。こういう現場に居合わせることはないが、報告を聞くと感動する。

 

こういう顕著な効果例を、医学では「著明な効果」略して「著効」という。我々は、著効集を作り、どういう場合に著効が起こるか。分析すると、新しい治療条件が見付かる。5年も経つと、新しい条件が標準化されて、効果は当たり前のこととなる。今度は、その条件を取らないと、医療ミスということになる。

 

医学も、いつも不完全なまま実施されている。思わぬ副作用が現われることもある。一方、予想もしなかった「著効」が現われることもある。最後まで、諦めるべきではない。