2004.9.27

西 村 三千男 記

聴講生生活の近況報告と感想

 

武山さんのウィーン旅行記を興味深く拝読し、何時の日か自分もシュレディンガーや

ボルツマンの墓碑銘参りをトレースしたい気持がムラムラッとわいて来ました。

 

 2002年秋の奥飛騨旅行の宴会席で告白しましたが、会社を非常勤となったその年

の後期からで東工大理学部へ聴講生(正式には「科目等履修生」と称する)として入学

し、今日まで継続中です。選択している科目がたまたまシュレディンガーやボルツマン

と因縁が深いのです。近況報告を兼ねて聴講生生活の感想を下記します。

 

入学審査

 

願書を提出して書類審査を受けます。最終学校(私の場合は京大)の卒業証明書と成

績証明書と健康診断書を添付します。検定料は¥9,800.でした。これに合格する

と、入学手続きとなり、入学金は¥28,200.でした。授業料は1教科(2単位、

90分)で¥28,800.です。

 

 学生証が交付され、図書館がフリーパスとなります。学外で学割も使えますが、今の

日本では大抵は学生割引よりもシルバー割引の方が有利ですから学割を使うチャンスは

あまりありません。

 

何を履修するか?

 

聴講を始めるに当たり、選択科目は「物理化学」と予め心積もりしていました。長年

に亘る化学会社での技術者(ケミカル土方と卑下します)生活の中で常に、「困った時

には田村幹雄先生の『物理化学 上と下』をひもとく」ことが習慣となっていました。

人生の最終盤戦で、長年お世話になった物理化学に対して、敬意を表しながらサビ落し

もしようと考えたのです。ところが東工大理学部の物理化学は私の想像とはまるで違っ

ていて、物理化学第1:量子化学、第2:統計熱力学、第3:反応速度論と分かれてい

ました。我々の時代のいわゆる物理化学は1回生の「化学」で履修しているそうです。

 

 そこで、これも何かのご縁だと観念して学生時代にも敬遠していた「統計熱力学」や

「量子化学」に(老骨に鞭打って)チャレンジしています。

 

統計熱力学と量子化学

 

 驚いたことに統計熱力学では40年以上も前に刊行された参考書、裳華房の久保亮五

著「大学演習・熱学・統計力学」がそのまま通用します。そのために同書は再版を重ね

て、今や第51版です。どの教官も、宿題や期末試験をこの本からそのまま出題される

ことが多いようです。再版の序文の中で編者は以下の如く述べています。「学問の進展

に合わせて改定することは必要だが、基本的事項の理解と習熟を目的とする演習書では

改定要求はあまり強くない」と。

 

久保亮五先生の総説を読んで次の様に理解しました。「統計熱力学は19世紀後半か

ら研究されて、古典的な部分は一旦成熟した。これに関連の深い学問分野である、量子

力学、半導体物理学、固体物理学、高分子物理学等々は20世紀後半の進歩発展が顕著

であり、それらは統計熱力学にも当然反映されている。」ただそれらは大学2〜3回生

の学習対象となっていないのでしょう。

 

一方、量子化学の教材は統計熱力学とは対照的に日進月歩のようです。数年前に刊行

された参考書でも役立たないか、または訂正を要する場合が多いのです。以前は物理学

者、物理化学者と数学者とが協力して、数学的に工夫して解いた成果を学習することが

中心であり、近似解法は副次的に学習してきた。それが、今日では学習の中で近似解法

の占める比率が大きくなってきています。計算機の性能向上と計算ソフトの進歩で、誰

でもが、パソコンででも、近似法で計算出来るようになったからです。

 

教室では〜〜

 

私は主として2回生、3回生の教室で聴講しています。社会人聴講生も稀少ですが、

私のような老聴講生は皆無です。アジア系の留学生は居ます(群れをなしている)が白

人留学生は稀少です。理学部ですから女子学生比はかなり高率です。彼女達は往時の如

きナリフリかまわない猛烈なガリ勉のイメージではなく、オシャレで、ピアスなどして

いて、ルイビトンを持った様な普通のお嬢さん達です。男女共に講義中に私語はしない

けれど、遅刻、居眠り、ケイタイに熱中するムキは多いのです。

 

宿題

 

先生によって、毎回宿題を出す先生、時々宿題を出す先生、全く宿題を出さない先生

と分かれます。学生さん達は多忙で宿題は喜ばないかもしれませんが、聴講生は宿題に

時間をかけることが可能で、学習が一層充実しますから宿題歓迎です。

 

学生時代には解けなかった(解かなかった)統計熱力学の重積分の難問に挑戦して、

1週間がかりで解決出来た時は快哉です。苦手であったエントロピー、分配関数、ボル

ツマン分布等々も事柄の内容の理解が深まったように思えます。

 

期末試験

 

私の場合は、単位は要らないので期末試験は受けなくてもよいのです。それでも宿題

が100%出来たことに気をよくして、期末試験でも100点を取ってやろうと何度か

頑張ってみましたが、惨憺たる結果となることが多かったことを白状します。

 

(おわり)