2005.3.16修正

西 村 三千男

連載「賢材研究会/KEN-Materials Research Consortium」

 

第3回 「これぞ賢材」

 

 「賢材」のコンセプトを最も適切に表す「究極の賢材」は正倉院の「校倉つくり」に使

われている木材であることは第1回に述べた。しかしながら、木材では賢材研メンバーの

開発ターゲットになり難い。メンバーの関わる工業素材分野に於いて人工的につくられた

「これぞ賢材」は何か、柳田先生の一般向け著書から引用しよう。

 

柳田博明著「次世代素材・インテリジェントマテリアル」

            講談社・ブルーバックスB−966(1993)

      柳田博明・山吉恵子共著「テクノデモクラシー宣言」

            丸善ライブラリー215(1996)

 

PTCR

 PTCR(Positive Temperature Coefficient Resistivity)サーミスターという素材が

古くから知られている。半導電性チタン酸バリウムの一種である。この素材は、電気抵抗

の温度係数が正であるために、電気ヒーターの発熱体に使うと電流に自己制御性がある。

センサー、CPU、アクチュエーターなしで確実な温度制御が出来る。古典的な電気回路

や今では懐かしいバイメタル制御と比較して遥かに簡単確実である。

 

今日的には電気炊飯器のような複雑な温度プログラム制御でも、ICチップを使うこと

により簡単、確実に実現出来るようになったので、家電製品ではPTCRヒーターの出番

は少なくなっているが、ヘヤードライヤーのような単調な温度制御には今もPTCRが使

われている。

 

積水化成品工業(株)はPTCR発熱体の特性を活かした「セキスイシートヒーター」

を開発した。冬場に打設するコンクリートを凍結から守る「養生用シート」として使われ

る。屋外の土木工事現場で使用するのであるから、センサー、CPU、コントローラーが

不要であるのはまことに好都合である。同様のコンセプトから「PTCヒーター」を雪国

のJR駅舎の屋根の融雪にも適用拡大が試みられている。

 

その他に、日本で本多・藤島先生が研究開発されて最近急ピッチに実用化が進んでいる

「光酸化触媒」やかなり以前に発明された「部分安定化ジルコニア」、「フォトクロミッ

クガラス」等も「これぞ賢材」の例である。

 

(以下次回)