2005.5.27

西 村 三千男 記

連載「賢材研究会/KEN-Materials Research Consortium」

 

第6回 電気化学の賢材〜その2

 

昨年10月の中越地震では上越新幹線が被災した。大損傷した浦佐〜長岡間の高架橋脚の

補修、補強の工事期間が予想以上に短縮出来て年末繁忙期に漸く間に合ったのであったが、

そのカゲには今回も「電気化学の賢材」の活躍があった。上越新幹線と在来線の全体の短期

復旧への貢献に対して、電気化学社は本年3月末にJR東日本から感謝状を受けている。

 

 貢献した材料名は前報の阪神・淡路大震災の時に活躍した「デンカ・ハイプレタスコン」

の他に今回はアクリル系瞬間接着剤「デンカ・ハードロックU」が加わった。被災、損傷し

た橋脚の診断から、補修、補強工法が決められた。工法の候補は、@セメント系モルタルで

損傷箇所を覆い、その被覆と既設鉄筋コンクリートとの隙間に接着剤をウラ込めする工法、

A鋼板を巻きたてて隙間にモルタルをウラ込めする工法、Bカーボン繊維やアラミド繊維に

接着剤を含浸したものを巻きたてる工法などがある。今回の主流は@の工法に決まり、その

材料に電気化学のスグレモノが指定されたのであった。

 

 今回の震災復旧工事では、これ以外にも新幹線と在来線のトンネル内の剥落部補修やコン

クリート構造物のクラック補修に於いて、電気化学社の接着剤「デンカ・ハードロックU」

及び特殊混和材シリーズから多くの材料が役立てられた。

 

既存製品「デンカ・ハードロック」から、新規に土建工事用「デンカ・ハードロックU」

を誕生させるのに私、西村も少し関わった。阪神・淡路大震災の時点、私は電化本社で技術

開発副本部長の職責にあった。前回述べた様に、緊急復旧工事に電化の特殊混和材が大活躍

したことを社内的に吟味、検討した。自社の製品群の中に他にも震災復旧や耐震補強に使え

るものが無いかを総点検した。そのために社内に組織横断的にE材開発連絡会(Eは地震の

こと)を組織して、既存製品群からのE材開発を検討した。この成果の一つとして、土建工

事用「デンカ・ハードロックU」は生まれた。

 

元来「デンカ・ハードロック」は便利な瞬間接着剤として、主として電機、電子の分野で

オートメ化接着に多用されてきた。特徴はレドックス触媒を巧妙に使用している点にある。

2液タイプであるが、触媒以外の組成は2液共通である。その一方に Red 触媒を、もう一

方に Ox 触媒を配合している。従って施工時の2液混合が大雑把でよく、本来的に自動化に

適合しやすい。このことは土建工事の現場施工にも適合することを示唆している。以前から

この使い易い高性能接着剤を、建築や土木分野にも用途を拡大しようと幾度もトライしたの

であったが、実績化していなかった。

 

阪神・淡路大震災の復旧工事で「デンカ・ハイプレタスコン」が重用されたことの吟味か

ら、土建工事用「デンカ・ハードロックU」の開発作業は、従来の電機・電子分野に実績の

ある接着剤チームではなく、土建分野で無機系材料開発に輝かしい実績を持っている特殊混

和材チームへシフトした。

 

 以来徐々に、各種の施工実績を重ねてきた。MM−21に対応して大改修工事を実施した

JR横浜駅では、狭い場所で接着工法による基礎杭を実現した。各地JRトンネル壁の剥落

対策にも使用された。「デンカ・ハードロックU」デビューから約10年の間に、ゼネコン

やJRの関係技術者に、この電気化学の「スグレモノ材料」の性能と施工法とが認知された

のであった。

 

(以下次回)