2005.6.27

西 村 三千男 記

連載「ドイツ化学史の旅のこぼれ話」

 

第2回 アスバッハ (Asbach)〜〜ヒトラーの愛したドイツの火酒

 

アスバッハ (Asbach)、懐かしい名前である。旅の初日、宿泊するアスマンズハウゼンを

出て、夕食(ワインパーティ)のため隣村のリューデスハイムへ向うバスの中から、沿道の

建物の壁にこの名前を大書してあるのを見かけた。それを見た瞬間チラリと想った。「酒蔵

(Brandy Cellar)かな? もしや、リューデスハイムはアスバッハの故郷かな?」と。後で

調べたらその通りであった。

 

 アスバッハはドイツ産のブランデーである。ドイツ語では Weinbrand という。長い歴史

を持ち、ドイツ国内では有名ブランドであるが、海外ではあまり知られていない。日本では

実物も広告宣伝も殆んど見かけることはない。海外へはあまりマーケッティングしていない

様である。

 

古いドイツ人はウィスキーをあまり好まず、ブランデーを選好する。ウィスキーは国内生

産されていないが、ブランデーは唯一アスバッハが国産されている。そして、ブランデーで

も心の中ではフランスのコニャックよりもドイツのアスバッハを珍重している様でもある。

日常的にはビールと白ワインとシュタインヘーガーを専ら飲んでいるが、あらたまって高級

酒を求める時はアスバッハというパターンである。以前ドイツに駐在していた当時、古いド

イツ人との交際ではアスバッハのボトルを贈ったり、頂いたりすることもあった。

 

 リューデスハイムの夕食からホテルクローネへ戻ったところで、ハーブティーを所望され

る夫人連に「ティーでなく、アスバッハをどうぞ」と男女5〜6名でホテル本館のバーへ。

クローズしていたバーを愛想のよくないフロイラインに開けて貰って、数十年ぶりにアスバ

ッハを味わった。なかなかに美味だと思った。アンコールもしたがお勘定は決して高くはな

かった。

 

(以下次回)