2005.1.17

西 村 三千男 記

 ヨーロッパ鉄道のバリアフリー化

 

JR東日本や私の住居近傍の東急電鉄では駅や車両のバリアフリー化が急ピッチに進んで

いる。これは、平成12年にいわゆる交通バリアフリー法が公布、施行されたからで、日本

全国の各JR、各私鉄でも多分同様であろう。

 

法令が求めているのは車椅子の人が駅の入口からプラットホームまで介助無しで移動出来

る経路の確保である。具体的にはあらゆる段差に対してエレベーターやスロープのバイパス

を設けることである。東急電鉄では既に駅の80%以上がバリアフリー化されており、更に

各駅にサービス介助士の有資格者を配置済みである。日常的に、車椅子の人が介助無しで電

車を利用しているのを見かける。乗降の際にそれがワンマンカーの電車であっても、何処か

からサービス介助士がさっと現れて渡し板を架けている。

 

 急速に高齢化が進む日本で、この様に弱者に優しい、しかし当り前と言えば当り前のこと

が進捗しているのは喜ばしいことである。交通バリアフリー化の先進国はなんと言ってもア

メリカだそうである。滞米が長くてアメリカ、カナダ、ヨーロッパのいずれにも詳しい長男

の情報である。ヨーロッパでは、またイタリアではどうか?ヨーロッパは全般的に日本に比

べ車椅子の人口が多いようである。たまたま周囲に居合わせた健常人が車椅子の人々をごく

自然に介助する光景を時々見かける。一方、ハード面の交通バリアフリー化はヨーロッパで

は現存する駅や車両等の構造からすこぶる難問題である。

 

ヨーロッパの鉄道、就中イタリアの鉄道はプラットホームからレールまでが非常に浅い。

ヒョコヒョコと歩いて渡れる程度の深さである。駅の各所に「歩いて渡ってはいけない」と

標示されている。プラットホームからレールが浅いことはプラットホームから電車(列車)

の床までがその分だけ高いことを意味している。乗り込むのにドアー口で階段を3段くらい

上ることになる。手荷物の多い時には難儀なことである。車椅子はどうするのだろうか?

 

 ヨーロッパでは駅のホールと各プラットホーム間の往来通路としては、陸橋ではなく地下

道が一般的である。ターミナル駅以外の駅では地下道へのエレベーターは先ず無い。スーツ

ケース等の手荷物を沢山持ってここを移動するのはきつい。ヨーロッパの人々は旅行に沢山

の荷物を携行する習慣がある。往時は駅にポーター(赤帽)がたむろしていたのだろうが、

今日ではポーターは居なくなった。老人などの弱者はここでも難儀する。車椅子はもっと困

ることだろう。

 

日本では新幹線も、在来線も、各私鉄もプラットホームと電車の床は高さが略々同レベル

となっていてバリアフリー化には好都合である。また駅ホールと各プラットホーム間の移動

用に後付けエレベーターを設置するスペースも見つけ易そうである。翻って、ヨーロッパの

鉄道に日本で進捗しているような交通バリアフリー化を適用するのは、プラットホームと電

車床の間の段差から至難のことと思われる。また駅ホールと各プラットホーム間に後付けで

今からエレベーターを設置工事するとしても、陸橋よりも地下道の方がずっと難しかろう。

 

JR総研の友人と一杯飲みながらこんな話題になった。彼曰く「我々が心配しなくても、

かの国々で研究が進んでいるよ。勿論、解決策はプラットホームではなく車両の構造の方で

ある。但し、その中味は承知していないがね.」と。

 

                       (おわり)