2005.1. 3

西 村 三千男 記

「赤いカンパリ、白いカンパリ」

 

イタリアンブームが長らく続いて、イタメシの食前酒としてカンパリが随分身近になって

いる。近年は女性向けにカンパリオレンジなども工夫されている。サントリーが輸入してい

る正規品でも最近はずいぶんお安くなってきた。我が家の常備酒の一つである。私はこのイ

タリアンリキュールと40年来の付き合いで、幾つかの深い思い出を持っている。

 

 白いカンパリ

カンパリは赤い。ところで、皆さんは白いカンパリをご存知だろうか。現在では白いカン

パリは一般市販されていない様であるが、約20年前には確かに存在していた。ネット情報

にもそう記述されている。コーディアル・カンパリと名付けられていたようだ。

 

 1983年に初めて東京本社に転勤して少し時間が経過した後で、接客用として銀座に唯

1軒だけ行きつけのクラブを決めていた。そこで少し通ぶって「カンパリ・白」をダブルの

オン・ザ・ロックスで注文するのが習慣化していた。

 

 出会い

 43年前、電化クロロプレンの製造技術開発に成功して間もない電気化学にイタリア最大

の某化学企業から技術導入の引き合いがきた。偉大であったが早世された当時の上司RK氏

がその交渉とイタリア化学会での招待講演を兼ねてイタリアへ出張された。そこでカンパリ

の魅力にすっかりハマッテ帰任された。持ち帰られた免税品の貴重なカンパリを講釈付きで

試飲させて頂いた。すぐに飲み尽くしたが、お金さえ出せば追加を購入出来る様な社会情勢

ではなかった。RK氏はカンパリによく似た味を求めて、焼酎をベースに夏みかん酒をあみ

出した。これまた「似ている、似ていない」の議論付きでよく飲まされた。

 

 like petrol

 1965年にヨーロッパ駐在員として赴任した。前にも何処かで述べたが、アイソマーズ

森山さんが電化クロロプをピレリに売り込んで下さったのがキッカケであった。イタリアは

私の主戦場となった。カンパリの発祥地トリノには特に重点ユーザーが集中していて頻繁に

往訪していた。RK氏の強烈な影響を受けていたので、食前酒にカンパリを注文することが

多かった。イタリア人のビジネスパートナーMさんは「そんな petrol のようなものをよく

飲むね.イタリアにはもっと美味しい飲み物が種々あるのに」と呆れられた。当時はイタリ

アでもカンパリをオン・ザ・ロックスで飲むのは珍しかった。それをイタリア語で注文する

表現を教わった。「Campari con ghiaccio senza soda (=・・with ice without soda)。

 

 v. d. W. 社長

オランダの某化学会社にファン・デア・ワールスによく似た名前の社長がおられた。この

W社長は私の仕事を格別に信頼して下さった。容貌魁偉の偉丈夫で、仕事の他に「飲む、買

う」にも達者であった。宴席でW社長は好んでカンパリのダブル・ダブル・ロックスばかり

を飲まれていた。若い頃、イタリアに駐在してクセになったと述懐されていた。宇奈月の料

亭でW社長を主賓とする宴席で仲居さんが飲み物の注文を聞いたのに対して、一寸キザでし

たが「Campari con ghiaccio senza soda ? 」と取次いだものだ。「おぉ、君はイタリア語

を話すのか?」、「いいえ、ポコポコ」。

 

赤いのは昆虫エキス?

先年のこと、オランダ人の友人がカンパリの成分は昆虫エキスだと言い張る。ハーブやス

パイス等の植物系リキュールだとばかり思い込んでいたので驚いた。ネットで検索したら、

レシピは公表されたことは無いが、外部の人が繰り返し分析し、原料を推定されているよう

である。やはり植物系らしい。夥しいネット情報の中にほんの数件、あの鮮やかな赤色は昆

虫エキスに由来するとの記述が見つかった。ボトルのラベルにはカルミン酸色素含有と表記

されている。カルミン酸を検索するとコチニール系色素で、正体はエンジ虫(カイガラムシ

の1種)のエキスらしい。安全性の確認された食品用色素でお菓子類にも使われるが、消費

者に嫌われるので昆虫由来とは言わない。この赤色は「マリリンモンローの口紅の色」と全

く同じとの情報もあるが真偽は判らない。

 

                          (おわり)