料理の鉄人                            (2-26-2005)

 

日本で十年続いたフジテレビの「料理の鉄人」の英語吹き替え版の人気が米国で非常にたかく、毎晩録画が放映されている。そして、そっくりのアメリカ版がこの一月からはじまった。このアメリカ版は過去の蓄積がないから週に一度放送される。料理の試合を行うスタジアムの設計もそっくり、会長にも日本と同じく一風変わった人物を選び、番組の始まるとき会長が野菜にがぶりつくとこまでよく似たことをやる。解説者や審判の構成もよく似ているが、服装は単純にしている。

 

米国では外国の真似をして熱狂してしまうことが過去にはほとんどなかった。面子にかかわるので、外国の真似はしないとさえ思えた。したがって、「料理の鉄人」がこのような形で米国で始まったのは異例のことで、この番組の独創性の高さと、その影響力の強さのがもたらした結果であるといえる。「料理の鉄人」番組の創設者とフジテレビをたたえたい。

 

「料理の鉄人」が日本の割烹界内外に与えた影響は大きいといわれている。さまざまな料理の仕方に対する理解が高まったことも一つの成果であるが、この番組の大きな成果の一つは、日本での料理人の社会的地位を非常に高めたことだといわれる。米国の料理人の社会的地位も同時に高めたという。そこに「料理の鉄人」が米国で高く評価される一つの大きな理由である。

 

この番組が視聴者に与える影響も大きい。もともと米国はうまい食べ物に関心が薄く、ハンバーガーでも代表されるように、でっかい牛肉とジャガイモの焼いたのを飲み込めばお終いとさえ言われたくらいで、また食料品の材料も手のかからない食品用しか売らなかった。そのアメリカ人の食生活で、今はかなりの速度で、うまいものに関心が高まりつつある。

 

さてアメリカ版の「料理の鉄人」に日本の鉄人、サカイヒロユキが客人鉄人として二度ほど出たが、日本ではほとんど負けたことのない鉄人なのに、こちらでは精彩がでない。同じ日本人でもニューヨークを本拠にするモリモトマサハルの方が強いかもしれないが、先週カナダから来たシェフにまけてしまった。一二度の試合ではよくわからないが、審判者の好みが日本と米国では違うのではないだろうか。たとえば、米国の食べ物にはメキシコの影響が非常にく、メキシコ風の味を知っている審判に、メキシコ風が使えないシェフと知らないシェフが戦った場合、後者が不利になる。

 

また日本人のフランス料理専門家でも、日本人に好まれるフランス料理になれてしまっている可能性もある。たとえば、日本でフランス料理をたべての感想だが、日本人用に迎合した味になっていて、本当のフランスで食べるのとはだいぶ違うのである。

 

とはいえ、先週米国の鉄人モリモトマサハルを負かしたカナダからの挑戦者は、フランス料理と日本料理を熟知していた。蟹がその日与えられた課題の材料であったが、一時間の持ち時間内に5個の料理をしあげ、そのなかの2個は、すしと茶碗蒸しの形を取り入れたもので、審判者の絶賛をあび、点数は鉄人モリモトマサハルをはるかに離してしまった。モリモトも5個の料理を作ったが、そのなかの2個は風格がはっきりせず、あまり評判がよくなかったのである。このアメリカ版の「料理の鉄人」のシリーズは、日本語に吹き替えて日本でもフジテレビが放送しているのではないかと思う。