メキシコの料理    (2-26-2005)

 

メキシコというと、人々は浅黒く見栄えがせず、庶民の生活レベルが低く、また不法移民を大量に送り込んでくる国で、何段も見下げることが多い。政治的にも経済的にもメキシコは米国の隣で精彩なく存在しいるかのようである。ところがよく見ると、米国は将来メキシコ人に乗っ取られてしまう可能性が濃くなっている。その証拠のひとつは、4年ごとに行われる米国大統領選挙の有権者にメキシコ系の市民が占める割合が、他のどの少数人種グループよりも大きくなり(黒人をはるかに追い抜いた)、いまや候補はメキシコ系の有権者を無視できない。この傾向はますます激しくなる見込みで、近い将来米国はメキシコ系が大半を占める可能性が濃い。

 

米国の国境をどんなに厳しく警備しても、そこを乗り越えて侵入してくるメキシコ人の不法移民を完全にとめることは不可能である。彼らはいったん入ったら、低賃金で長時間粘り強く働き、米国で地盤を固めてゆく。犯罪を犯さない。また子供が出来れば市民権も得られる。出産率が高い。これがメキシコ系の米国市民が増える理由である。

 

一方米国側には、このようなメキシコ人を歓迎しているところが多くみられる。雇用者側からみると、メキシコ人労動者は技能の要らない職種では理想的である。また、一例だが、過疎地帯の農村市町村では、若者か居つかないので、メキシコ人の移住を歓迎して、地方行政は不法侵入摘発をまったくやめたどころか、積極的にメキシコからの移住者を援護している所があるという。更に大きなスケールでは、米国の経済は、いまや安い賃金の労働力をフルに発揮して輸出産業を猛烈な勢いで拡張している中国経済との競争に苦戦しているが、これを解決する大きな鍵は、メキシコ人の労働力利用を拡大することである。ところが、不法移民を取り締まる立場の連邦政府は、このことを積極的に行うことができない。したがって、メキシコ人を歓迎し、擁護するのは地方政府の仕事である。

 

前置きが長くなったが、このようなメキシコ人の多い地域では、スーパーマーケットでは、メキシコ人用の食料素材が並べられ、またレストランでもメキシコ風を取り入れるところが多い。しかし、それらのほとんどは、庶民の食べ物で、挽肉と金時豆を煮込んだスープや、トーモロコシから作る泥臭いにおいのする平らったく薄い皮のようなトルチアで肉、チーズ、ライスを包んだ食べ物、タコ、

などが代表的である。最初はのどを通らない思いでも、何度か食べているうちに好きになってくるメキシコ料理もあるから面白い。

 

メキシコの文化は、マヤ文明(スペインが滅ぼしてしまった)から受け継いでいるものと、スペイン人が持ち込んだ文化の混合である。メキシコの上層階級は皮膚の色が白く、食べうものもスペイン風のものがおおい。魚介類もおおく使われるが、高級レストランへ行かなければメキシコ風の魚の料理は食べられない。

 

メキシコはココアと深い関わりがある。ココアはもともとメキシコの原産で、マヤの王が、ココアを飲んで勢力をつけ50人もいた妻の相手したという伝説がある。このココアは16世紀スペインに持ち帰られ、砂糖を加えて飲まれるようになった。しかし、砂糖もココアも高価なもので、王や貴族だけの飲み物であった。英国で産業革命が始まったころ、ココアにミルクを混ぜることが発明され、ココア、チョコレートは庶民のものとなった。現在のベルギーやスイスの有名なチョコレート会社は19世紀初期に創設されたという。

 

先日、アメリカの南部でスペイン風レストランを開いたスペイン人のシェフを取材したテレビ番組があった。そこのシェフはスペインで修行してきたが、メキシコへ行ってみると、スペインから受け継がれている料理が非常におおく、メキシコ料理を自分のレパートリに取り入れるのは自然で楽しいと話していた。

 

彼のメニューには本来のスペイン風の蛸など料理もあるが、またメキシコ風の材料と組み合わせたものも始めたという。彼の調理場で、蛸を乗せた皿のすぐ横で、「taco」とよばれるメキシコの材料を使っ調理の説明をしていた。全部英語なのに、tacoと蛸が頭の中でこんがらがって、一瞬だったとはいえ、何の話かわからなくなったのである。