2005.1.25

西 村 三千男 記

NHKプロジェクトX(東レ・エクセーヌの巻)

 

昨今、良きにつけ悪しきにつけ話題になることが多いNHK総合TVの人気番組「プロジ

ェクトX」は毎週火曜日に放映されている。テーマは汗と涙の開発物語であることが多い。

オープニングに中島みゆきが唄う「地上の星」は、開発で艱難辛苦を重ねたけれど十分には

報われなかった人々への讃歌となっている。自らも会社生活で開発に携った経験を持つ熟年

男性達が、TVの前に正座して感動で涙しながら視聴しているとの風説もある。

 

去る1月18日のテーマは東レのスエード調人工皮革、エクセーヌであった。いつも通り

の少々誇張気味の開発物語であった。取材出来た数名のキーマンをスタジオにゲストとして

招き、彼等だけに焦点を絞り込んでストーリーを組立て、その周囲に居て開発の苦楽を共に

したであろうその他大勢を無視してしまう常套の手法である。

 

エクセーヌの開発物語は20年以上も前に内橋克人著「匠の時代」で読んだことがある。

アイソマーズHP2003年号に書いた「ポコポコ・イタリアーノ〜第4回:イタリアの達

人/小林元氏のこと」のアルカンターラはエクセーヌのイタリア版でもある。TV放映を視

た後で、これまで記憶にあるイメージとほんの少しだけど違和感を覚えた。登場したキーマ

ン達は同一であったか、ストーリーに喰い違いはなかったかをチェックしようと手許の「匠

の時代」を読み返した。

 

 記憶では、「匠の時代」には製造技術開発の苦労が4割に対して、市場開発の苦労が6割

位の重みで書かれていたような印象を抱いていた。我が記憶はいい加減なものであることを

再認識させられた。何と書き出しはイタリア、テルニにヨーロッパ初のアルカンターラ製造

工場を建設する苦労話が綿々と綴られ、その後、馴れないイタリア人オペレータ達によって

試運転に成功する話が続いている。実は、私の記憶からはこの部分がスッポリ抜け落ちてし

まっていた。それ故に、上述の「ポコポコ・イタリアーノ」にアルカンターラを紹介した時

には「匠の時代」との関連には全く思い及ばなかった。

 

エクセーヌは国内販売よりも米国市場の立ち上がりが先行したという。折からの日米繊維

貿易摩擦の相手国アメリカでウルトラスエードとして爆発的に売れ始めた。「匠の時代」で

はイタリアの工場建設の話、アメリカの市場開発の話と続いて、国内市場開発に於ける大苦

戦は最後に述べられていた。

 

 「プロジェクトX」と「匠の時代」と「小林元氏の講演、著述」との間には少しずつギャ

ップ(喰い違いではなく)がある。ギャップはエクセーヌ(日)とウルトラスエード(米)とア

ルカンターラ(欧)を Web 検索して容易に埋められた。

 

(おわり)

 

ついでに:

HP2002年号掲載の「噺家・春風亭柳昇とアイソマーズ」に述べた武山さんの話題、

「人工腎臓にガンマー線滅菌を世界で初めて適用しようとチャレンジして内橋克人の名著

「匠の時代」に実名で登場するアイソマーズがいる.」に関する項も読み返した。

こちらは3年前に読み返しているので概ね正確に記憶していた。