20024

西村 三千男 記

非書評 「村上春樹現象をどう読む

 

村上春樹現象が賑やかになっている。早々と今年のノーベル文学賞受賞を予想するも

の(クーリエジャポン誌、NIKKEI NET、スポーツ新聞各紙)まである。

 

表題の「村上春樹現象をどう読む」は日経朝刊2面「風見鶏」に伊奈久樹編集委員が

書いたコラム(2006.4.16)である。それによると村上作品は30カ国語以上

に翻訳されている。先ごろその翻訳者たちが東大に集合してシンポジウムを開催した。

 

そのシンポジウムに出席した高麗大学女性教授がNHKの「視点・論点」で村上作品

が韓国でどう読まれているかを語っていた。早朝の再放送で偶然見かけた。

 

NYタイムズが「今年の10冊」の中の1冊として「海辺のカフカ」を選んだ。ドイ

ツ語版出版の際に、ドイツの硬派週刊誌「シュピーゲル」が書評で採り上げた。中国で

は「ノルウェイの森」がロングセラーを続け、ミリオンセラーになっている。台湾の大

学周辺には「ノルウェイの森」、「海辺のカフカ」と名付けた喫茶店が複数ある。

 

20年くらい前、「ノルウェイの森」が話題作となった時に「北欧ノルウェイは一応

我が輩の守備範囲ではあるが・・・」と食指が動いた。書評に「ノルウェイ・・・は歌

の題名であって、作品の舞台がノルウェイということではない.」と書かれていた。更

に当時の社会現象として「この本に、カバーをかけずに、題名を見せながら、小脇に抱

えて歩く」のがペダンチックな若い女性のファッションになっていると聞かされて読む

気を失った。そして食わず嫌いで今日まで来てしまった。

 

 今年のノーベル文学賞候補とまで言われて、ならば代表作を読んでみようかと書店へ

出向いた。文庫版の「海辺のカフカ」が「世界同時ベストセラー」の帯をつけて平積み

されていた。それと「ノルウェイの森」とを求めて帰り、この週末一気読みした。

 

 両作品の時代背景や登場人物の生き様には私の理解を超えるいわゆるジェネレーショ

ンギャップを痛感する。それでも「ノルウェイの森」は想定内であるが、「海辺のカフ

カ」となると、登場人物の異様な言動に驚嘆するばかりである。よくもまあこんな奇想

天外なプロットを考えつくものだと半ば感動した。文体はリズム感があって、トントン

トンと話が展開するので読みやすい。会話の部分には漱石張りの諧謔の味わいもある。

頻繁に出てくるセックスシーンはやや過激だがある種の爽快感もある。

 

もっと別の作品も読み込んでみようという気になった。

 

                                  (おわり)