鎮魂ミサ曲の美しさ

(1)バッハ、モーツアルト、ブラームス、フォレー

 

中村省一郎(1-6-2006)

 

鎮魂ミサ曲は数多くの作曲家によって作曲された。よく知られている作曲家の中ではモーツアルト、ブラームス、ブルックナー、フォレー、リスト、サンサーン、シューマン、ブリットン、ヴェルデイが知られているが、近代の作曲家の中にはトール タケミツの名も見られる。鎮魂ミサ曲は分類と用途から言うならば、死んだ人の魂のために祈り、キリスト協会のミサのときに聞く音楽であるが、作曲家は演奏会で演奏されることも念頭においている。私はキリスト教徒ではないのだが、若いときからいくつかの鎮魂ミサ曲の美しさには心をひかれていた。

 

今回この記事を書くきっかけになったのは、こちらの大学の図書館でいくつかの鎮魂曲のすばらしいCDを見つけたことである。多くはロバートショウによって指揮されたアトランタ交響楽団と合唱団の演奏で、非常に優れた演奏と録音である。

 

バッハ(1685-1750)は鎮魂曲と名のつく曲はのこさなっかたが、ロ短調のミサが後に作曲された鎮魂曲に多大な影響を与えていることは間違いない。

 

これらの中から、バッハロ短調のミサ、モーツアルト(1756-1791)、ブラームス(1833-1897)、フォレー(1845-1924)の鎮魂ミサ曲のごく一部を抜粋し、聞いていただけるようにした。これらの曲は時代は異なっても一本の糸で縫ったように繋がっているように思えるからである。バッハのロ短調のミサは4個のカンタータ(オーケストラ、合唱の組曲)から成り、第3カンタータの4曲目を選びたかったのだが、録音に切れ目がなく、私の技術では部分を抜き取ると、ファイルの嵩が何倍にも膨れ上がって扱えなくなる。それで第3カンタータを全部掲載したが、静かで緩やかで転調の多い4曲目をぜひ注意して聞いていただきたい。

 

PCで聞くためには、ここをクリックしさらに作曲者名あるいは曲名をクリックすると演奏が始まるので、イヤーフォンを計算機に差し込んで聞けばよい。コピーをとるためには、マウスを用いて自分のデイスクにひっぱり込めばよい。ただしブロードバンドの接続でないと長時間かかるかもしれない。全曲を聴きたい方はお知らせくだされば、コピーをおくります。全部wma式に変換してあるので、一枚のCDに普通の7-8枚分がはいる。

 

さて最後に、モーツアルト鎮魂曲について、ご存知かもしれないが一言書いておこう。この曲はモーツアルトの死の数ヶ月前「フィガロの結婚」「クラリネット協奏曲」などと平行して書かれた。しかし、鎮魂曲に含まれる14曲のうち何とか出来上がっていたのは最初の8曲で9曲目は8小節しか書いていなかった。後の部分はぜんぜん手もつけないまま死んでしまったのである。作曲依頼者からを受け取った前金は使ってしまっていたので、仕上がっていないといえばその金も返還しなければならない。こまってしまったモーツアルトの妻は弟子と交渉し、結局何人かの弟子が完成を試みては失敗した後、Sussmayrという弟子が完成した。したがって正確にはMozartとSussmayrの合作である。確かに最初から聞いてゆくと半ばまでは、Mozart特有のメローデイに満ちているが、途中からより深みのある音楽へと変わってゆく。そこに切れ目を感じさせないところはSussmayrの偉大さであろう。ここに掲載したのはモーツアルト自身が完成した8曲目のLacrimosaと、更にSussmayrが書いた13曲目のAngus Deiである。(映画「アマデウス」ではサリエリがモーツアルトを助けて鎮魂曲を仕上げたように描かれていたが、あれは嘘である)

 

昨年の秋からこの記事を書くことを考えていたが、正月前になって実際に編集と作業を始めてみると、以外に容易でないことがわかってきた。ひとつは音楽CDファイルを扱う技術の問題と、曲の選択であった。「一本の糸で、」と書いたが実は何本もの違う色の糸の筋があって、どの糸を取るかによって、曲の選択が異なるためで、何度も聞きなおし考え直した。それにどの部分も美しく、選択に迷う。またどの録音を選ぶかの問題もあった。たとえばフォレーの演奏は、小沢セイジ指揮ボストン交響楽団のすばらしいCDがあるが、音量をひどくいじってあるらしく、聞こえないくらい低い音量になったり、強く鳴り出すとものすごく大きくなる。ウイーン国立歌劇場合唱団の鎮魂曲も何枚かあるが、なぜか心に響かない。結局今回の3曲はロバートショウとアトランタ交響楽団で統一する結果となった。