豆雑学               中村省一郎   2007

 

日本の豆

日本人は米国人に比べて平均100倍の豆類を食べていると言う。日本で食べる豆は、小豆、エンドウ、インゲン、ソラマメ、黒豆、ピーナッツ、納豆。さらに味噌や豆腐は大豆が原料なので、大豆を食べている。主食のおかずとしてはエンドウ、インゲン、ソラマメ、黒豆が、間食としてソラマメ、枝豆、ピーナッツ、菓子として小豆がかなり多く食べられる。コーヒー豆はマメ科の植物ではない。

 

米国人も豆を食べる

米国ではどうかといえば、多種民族の国だから、どの民族に焦点を当てるかにより異なるであろうが、アングロサクソン系に焦点をあてれば、肉料理につけるおかずと、2種類のスープと、サラダにけっこう豆類を用いる。豆類のおかずと言うのは、殆どの場合豆の煮たのをバターで味付けしてあると思えばよい。豆の代わりにトーモロコシになることもあるいし、さやインゲンのこともある。

 

スープの一つは、チリスープといわれるもので、牛ひき肉と金時豆を煮込んだのに、トマトをくわえ、唐辛子でピリッとさせてある。米国で何が旨いと聞かれたら私はこのチリスープ、ニュウイングランド-クラムチャウダーとサブマリンサンドイッチをあげたい。それから、二個目のスープはビーンスープを言われるもので、一種類ないし数種の豆と、塩豚、ソーセージ、またはハムなどをにこんだスープである。おそらく、どこからかの移民が持込み、米国の開拓時代から続いている料理と思われる。

 

さらにサラダには、結構豆類がつかわれる。たとえば3ビーンサラダというのは、グリーンの鞘インゲン、黄色の鞘インゲンと金時豆の煮たのを、甘酢とサラダ油にあえたもの。Garbanzoビーンと言うのは粒が大きく、こりこりした豆で、これもサラダバーでは良く見かける。さやインゲンを食べる人は多い。さやインゲンは青野菜として分類され、豆を食べたことにはなっていないのかも知れない。スープに使われる豆は、サラダとしてもつかわれる。茹でた豆を、青野菜のサラダに振り掛けたり、またはそのままでドレッシングをかけて食べることもある。

 

アルファルファは、中近東から来た食べ物で野菜売り場には必ずみつかる。牧場などで好んで生やされる小さなマメ科の種をモヤシにしたものでサラダやサンドイッチに入れて食べる。

 

豆の売り場には16ビーンスープの混合材料という袋があり、その中に含まれる豆とは、pinto bean, blackeye pea, barley, navy bean, large lima bean, small white bean, red kidney bean, baby lima bean, great northern bean, speckled lima bean, green baby lima bean, black turtle bean, whole green pea, yellow split pea, pink bean, cranberry bean, small red bean, green split pea, lentil. これらの中でpinto beanはうずら豆、red kidney beanは金時豆、barleyは大麦でいんちき。black turtle bean は単にblack beanとも呼ばれ、黒豆そっくりに見えるが、味は小豆とそっくり。つまり小豆の親類には真っ黒なのもあると言うことなのだ。そのたインゲン豆の種とそっくりのがいくつかあるが、名前と豆が合致しない。

 

この混合豆の袋には大豆は入っていなかった。しかし、大豆はあらゆる所に知らぬ間に混合されはじめている。たとえばベービーフッドには非常に多く使われているし、スナックにも知らぬ間に大豆製品が入っていることもある。

 

大豆には慣れていない人もおおく、「馬に生の大豆を食べさせたら、ひどい下痢になって死にそうになった。だから大豆は豆腐以外の食べ方は、人体に毒である」というような考え方をしている人が多い。

 

その他の国

メキシコ料理には豆の煮たのを良く使う。インゲンとか、金時その他の豆の煮たのを、タコに入れたりトルチラでまいて食べる。豆類を主食のようにして食べているように思われる。

 

インド人の店にも多数の豆類を売っていて、実際インド人の家に招かれると、豆の煮たのにインド風のスパイスで味をつけた料理をだされるのだが、スープや団子にして食べているように思われる。

 

中国人の食べる豆は、日本と非常に共通している。味噌も豆腐も良く食べるから大豆はもちろん、餡子には小豆が主。モヤシも日本のと全く同じものを食べる。

 

特殊な豆類

平素は考えもしないような豆類というのもあって、その中には、蓮華草、クローバー、ルピナス、フェニュグリークを含めてよいとおもう。葛がマメ科であることを忘れてはならない。

 

蓮華草は漢方薬としてもちいられ、根の乾燥したのは、中国人の食料店で売っている。クローバは牧草として重要であるが、最近は薬用としても珍重されはじめている。その理由は大豆の次にイソフラボンの量が多いからである。アルファルファのごとくもやしとして食べられるのではないか。特にピンク色の(Red Clover)がよいと言われる。

 

ルピナスがマメ科であることは、花の咲いた跡に出来る種袋を見ると明らかである。ルピナスの種が食べられることは、資料などで時々見たことがあるので、知ってはいたが、意外にも袋入りが安くて近くの食料品店に並んでいた。葛もマメ科に入る

 

フェニュグリークはカレー粉の成分の一つとして重要なスパイスであるのに、知る人の殆ど居ない奇妙な豆である。糖尿病に効く。

 

ピーナッツが豆の一種であることは忘れがちだが、かなり変わった豆である。花が咲くまでは地上で、実になると地中に潜ってしまい、収穫は土から掘り出す。ピーナッツで忘れてはならないことは、その健康に大事な成分は薄皮にあること。出来ることなら薄皮だけを集めて食べろという。

 

かわった豆類の一つはタマリンドで、本物のウスタシャソースの原料である。そこまでは間違いないのだが、とんかつソースの重要な原料であると思い込んでいたのは間違いであった。

 

 

豆の共通性と特殊性

豆は旨いというばかりでなく食量として重要な役目をはたしている。その第一は蛋白質と炭水化物質源としてである。蛋白質は驚くほど多く、20~40%含んでいる。小豆でさえ22%のたんぱく質を含み大豆では60~70%に至る。その理由は、マメ科の植物は、空気中の窒素を吸って、たんぱく質を光合成する能力をもつからで、微生物が豆類のために働いて根粒をつくってくれるそうで、有難い。寒さに強いソラ豆は、土の中の窒素をふやすので、農地の改良にもつかわれ、冬の間に農地が使われていない間に生やし、春がくると耕して、土の中に埋めてしまう。こういう植物をグリーンマニュア(緑糞?)という。

 

第二はミネラルである。カルシューム、カリ、亜鉛、ニッケル、クロム、セレンをはじめ、体が必要とするおおくのミネラルが豊富である。なぜこんなに多くのミネラルが必要なのか不思議だが、あるから利用して動植物が生きて来たのであろう。

 

第三は豆に多く含まれ、最近特に注目されている物質、それはイソフラボンである。イソフラボンはphyto-estrogenともよばれ、弱い女性ホルモンの作用を持っていて、女性ホルモンの不足した体では、補う役目をし、また多すぎる体では女性ホルモンの働きを抑える役をするといわれ、洋の東西の医学界で激しい論争が展開中である。いずれにしても、イソフラボンを多くとっていると、乳がんが減少、閉経後の障害が非常にすくない、血圧がさがるので心臓障害がへる、前立腺がんがすくないことが家森氏によって統計的に示された事実である。現在の論争とは、イソフラボンを食べさせて病状に作用したかしないかの具体的な方法と証明に関することが多い。抽出したイソフラボンが、治療に効くかどうかの議論が殆どである。イソフラボンは大豆に最も多く含まれるが、薄赤色の花の咲くクローバにも多い。

 

第四は、豆類の多くはサポニンを有し、インスリンの精製を促し、利用率をたかめる働きがある。肥満や高血糖症には絶対に必要といえるくらい大事な食品である。

 

大豆の利用

大豆を食べる国で、心臓病、脳疾患、乳癌、前立腺癌、老人の骨密度低下症などが、大豆を食べない国に比べて非常に低いことが知られて依頼、欧米諸国で大豆に対する注目が急に高まってきた。しかし、大豆に慣れていない欧米人の食生活に大豆を取り入れて行くのは大変なことである。それでもエダマメなどは名前も知られるようになり、スーパーなどでも見かけるようになってきた。寿司はどこのスーパーでも買えるようになったことから見て、案外大豆が普及するのも早いかも知れない。