タマリンドとトンカツソース

 

日本人が常食しているのに知られていない豆の一つは、タマリンドであろうと思ったのだが

 

舌足らずな言い方だが後でわかってもらおう。マダガスカルがタマリンドの原産地だが、インドからは一直線の海路でさほど遠くない。タマリンドはインド人の食料としてなくてはならないものとなり、インドや他の東南アジアの国でも盛んに栽培されている。タマリンドの木の高さは20mにもなり、豆の鞘は馬鹿でかい。この豆の鞘には強い酸味があり、豆は渋い。乾燥させたものも売っている。タイではタマリンドを砂糖と煮込んで、飴のようにしたものがあり、不思議な旨みがある。

 

タマリンドという豆に出会ったのは、もう何年も前のこと、米国で日本食が乏しい時代に、一つの解決法として麹の作り方を覚え味噌や麹漬けに成功したころ、とんかつソースを作って見て欲しいという注文を家内から言い渡された。これには最初少なからず困惑した。どうすればよいか見当がつかなかったのである。しかし、調べているうちに、歴史もふくめて次の様なことが明らかになってきた。

 

ソースの元の正式の名前はWorcestershire auceである。(ウスタ シイア、またはウスタ シャー ソースと発音するそうな)イギリスで、カレー粉と良く似た状況で1838に発明された。インドが独立するまで、英国人の中上層階級は、インドの駐在員や植民地政府の役人として多くがインドに出かけ滞在した。彼らはインド人の料理人を雇い、インド料理に親しんだが、帰国するとインド料理を恋しがった。そんな中、ウスタに住む二人の薬剤師Lea Perrinsが、ベンガル地方の知事をしていたインド帰りの役人マーカス-サンヂィ卿にたのまれて、ソース開発を試みた。タマリンド、玉葱、ニンニク、アンチョビ、酢、カレー粉、醤油、黒砂糖、塩が原料であった。

 

ところが、出来あがったソースはひどい味で使い物にならなかった。ソースは樽の中で放置され、忘れ去られようとしていたが、二年後に引越しで処分しようとして味見したら、そればすごい成功と判明したというのである。その後、このソースは英国鉄道の食堂車に専用契約で売られ、この薬剤師達は大もうけをした。その会社が今も伝統を守って作っているのがWorcestershire Sauceであって、それ以外のところで似た物を作ると、Worcester Sauceというのだそうである。ところがややこしいのは日本のソースはJapanese Worcestershire Sauceとしては知られている。見かけだけが本物とそっくりという批評である。Japanese Worcestershire Sauceの材料は、果物、酢、トマト、塩に砂糖を焦がして色をつけてあり、タマリンドは入ってないという。

 

ところで、我が家のソースも成功した。日本人のソースでタマリンドを入れて作るのは、我が家だけということになる。

 

タマリンド豆のさや