2007.6.21

西村 三千男 記

再編「ポコポコ・イタリアーノ」

 

第2話 イタリアの午睡(シエスタ)と昼食

 

 シエスタ(Siesta)と呼ばれる午睡の習慣は、スペインでは今日的にも存続している

ようだ。イタリアでもスペインほどではないけれど、南イタリアの一部にはこの優雅な

伝統が痕跡としては残っている。スペインやイタリアの、伝統的建築では住宅の寝室や

ホテルの客室の窓は「鎧戸〜雨戸」のようなブラインドを備えている。午睡の時に部屋

を真っ暗にするためである。そしてシエスタ(Siesta)という単語はスペイン語〜イタ

リア語に共通している。

 

 イタリアで一般の商店は昼食の時間には、一度シャッターを閉めて休業する。概ね、

13:00〜16:00の時間帯である。勤め人で自宅と職場が近い人々は昼食をとる

ために帰宅する。イタリアでも以前は昼食の後、午睡していた。午睡の習慣がすたれて

珍しくなった今日では、シエスタは「午睡」の意味ではなく、この「長めの昼休み」の

意味で使われることもある。

 

 ずっと以前の話であるが、ミラノで若い友人S君から週日のランチに自宅に招かれた

ことがある。一度だけの珍しい体験であった。職場から正午過ぎにS君の車でS君宅へ

行った。事前には聞いていなかったけれど、父親の居ない母子家庭であった。S君は独

身、やはり独身で美人の妹さんもランチに帰宅していた。先ず、マンマが私に家の中を

案内してくれた。余談になるが、一般家庭にもビデがあるのだと気付いたのもこの時で

あった。それから、皆なでマンマの作りたてのパスタに始まる素敵な手料理をいただい

た。アルコールフリーの飲み物と世間話を楽しみながら、時間をかけてゆっくりと食事

するのであった。食後は勿論職場に帰った。

 

マンマのパスタ

東レOBの小林元さんによると、イタリアにも会社によっては社員食堂の如きものが存

在するが、そこではパスタ類は絶対に提供されない。短時間に多数を提供するには作り

置きになってしまうからである。パスタは作り立てがイノチ、作り置きのパスタはイタ

リア人の想定外である。パスタはなんと云ってもマンマのパスタが一番だ。

 

ビジネスランチ

ビジネスランチ・・・このすこぶる「非イタリア的なもの」も政治、経済、社会各般

のグローバル化(というよりアメリカ化)で、スローフード/スローライフを尊ぶイタ

リア社会(殊にミラノ)に浸透してきたそうである。ホテルやリストランテで見かけた

ことはないけれど、TVイタリア語会話で(pranzo di lavoro)と紹介された。

 

スペインのシエスタ

40年も前のこと、スペインに出張してその食事時間に驚いた。午前11:00頃、

軽くコーヒーと間食をとる(そういえば、日本にも昔「小昼」という習慣があった)。

実は昼食時間が14:00以降になるから「つなぎ」が必要なのである。そして昼食は

オレンジのぶつ切りを投げ入れた低アルコール度のサングリアを飲みながら、たっぷり

2時間以上をかける。その後、17:00頃から20:00頃まで午後の仕事をする。

夕食は21:00頃が標準であった。

 EUの他の国々の大部分はシエスタの習慣はない。それらの国から、午後、シエスタ

の時間帯にスペインのビジネスパートナーへ電話をかけても、彼らは昼食か午睡の最中

でオフィスには不在である。スペインの政治、経済、社会のリーダーたちは、此の生活

習慣が経済活動の妨げになるからと、シエスタの時間短縮に躍起となっているそうだ。

が、庶民はこの優雅な習慣を止めようとはしないらしい。それでも、このところスペイ

ン経済は絶好調を続けている。

 

                             (以下次回)