2007.7.12

西村 三千男 記

再編「ポコポコ・イタリアーノ」

 

第5話 イタリア英語とカタカナ英語

 

イタリア英語とカタカナ英語

 よく知られた小話「イタリア語は書いてある通りに読む。フランス語は書いてあっても

読まない。英語は書いてあるのと違うように読む。」は言い得て妙だと思う。普通のイタ

リア人は「英語」も書いてある通りに読む。「イタリア英語」と言われる。我々日本人に

は「ローマ字読み」している様に思える。一方、日本人には「カタカナ英語」というのが

ある。両者には少々共通点がある。

 

イタリア英語

書いてある通りにローマ字読みする例を挙げよう。自転車を「ビ・サイクル」、P&G

の紙おむつを「パンペルス」、スポーツドリンクの元祖「GATORADE」を「ガトラーデ」と

いった具合である。またイタリア語やフランス語ではHはサイレントであるから、ホンダ

は「オンダ」に、日立は「イタチ」になる。常陸宮華子様を「イタチノミヤ・アナコ」と

云ったのは日本人駐在員の悪いジョークだろう。

 

 タイヤ、ゴム、電線の「ピレリ社」はイタリア生まれの多国籍企業である。世界各地の

ピレリが一堂に会して技術会議開くとき、公用語は英語に決めている。その席でイタリア

英語、XXX英語、YYY英語が飛び交って、侃々諤々の議論となるが、クィーンズ英語

の英国人だけが言葉が理解出来なくて、疎外され、取り残されるというジョークをピレリ

UKの技術者から聞いたことがある。

 

私のカタカナ英語「チケット?」

 中村さんが本HPに先月掲載された「NHKニュースの警戒音」の後半部の中で「シン

ロームー」を例に挙げてカタカナ英語を鋭く評論されている。

 

大恥を曝すが、私は今もカタカナ英語を使っていて、英語を話すのが下手である。中学

1年で英語を習い始めた時に、発音を発音記号表記ではなくカタカナ表記の辞書を使って

いた。そして、今なおカタカナ英語から脱皮出来ないのである。カタカナではlとrやth

szは区別出来ない。その後、英語の読み書きは受験勉強等でそれなりに勉強したが、

英会話はずっと苦手のままであった。1965年に勤務先の会社からデュッセルドルフ駐

在を命ぜられた際には、実務を急ぐ事情があって大急ぎで赴任することになり、語学研修

の機会は与えられなかった。

 

 駐在初期の頃のことで、冷や汗と共に思い出すエピソードがある。何処かの空港のカウ

ンターでフライト変更を手続きする場面で「チケット、チケット」と何度叫んでも相手に

通じなかった。最後に手許の航空券を示すと「オー ユー ミーン ティケット」とか言

われてしまった。

 

自分に通訳は要らないが、他人の通訳は出来ない程度

 その後、駐在や海外出張で場数を踏んだが話し下手は下手のままであった。それでも、

実体験の積み重ねで、「こういう場面ではこんな風に言い回すと通じる、こう話すと誤解

される」といったコツのようなものが次第に身についてきて、下手は下手なりに世渡りし

てきた。その結果、駐在員の時代にも、日本に帰任後の頻繁だった海外出張でも、自分の

仕事は曲がりなりにも通訳なしで何とか自分でこなしてきた。一方、例えば出張してきた

上司であっても、他人の仕事で自分が通訳をすることは会話力不足を理由に原則として避

けてきた。そしてビジネスマンの英語力の望ましいレベルとして西村案は「自分の仕事に

通訳は要らないが、他人の通訳は出来ない程度」を社内的に主張していた。

 

シングリッシュ

本稿に類似の話として、シンガポール英語「シングリッシュ」がある。数年前のこと、

同国の首相の年頭メッセージで、方言英語「シングリッシュ」ではなく正しい英語を話す

努力を国民に呼びかけていた。

 

                             (以下次回)