NHKの指揮者大野和士氏の活動を取材した番組について

 

最近NHKで放送された番組で、第二の小沢といわれる大野和士氏の活動を取材した番組を見る機会があった。最初の数分を見逃したので、番組の名前は分からない。近年、日本人の優秀な音楽家が多数出てくるようになったことは、日本人として誇らしくおもう。このような日本人の活躍に関する番組は、正直にいってNHKでなければ見られない番組であり、ほとんどNHKを見ない私にとっては幸運であった。

 

このような番組の取材には大変な苦労があることもよくわかる。大野氏が優秀であればあるほど、どこが他の指揮者と異なるかを、取材と編集によって伝えなければならい苦労はよくわかる。

 

私は、氏がオペラ指揮者としてなぜ高く評価されているのかを、オーケストラや歌手の練習中の音からも知りたいと思った。番組の内容構成としては、特に文句はないのだが、一つ言いたいことがある。

 

それは、まだ練習中の演奏の音がきこえているのに、すばやく「シンシカ、シンシカ、シンシカ、シンシカ、」と言うような、打楽器のジャズやロックが、あちこちで流れ始めることである。わたくしは、ジャズやロックも嫌いではない。しかし、オペラの音楽と、「シンシカ、シンシカ、シンシカ、シンシカ、」は相容れない。

 

さらに賛成できないのは、番組のテーマソングで、女性の大声でまくしたてる歌である。これが番組の、始まりと終わりに長くつずく。最近若い人の間ではやっているスタイルかもしれない。しかし、音楽としては低級である。幾つかの特徴は、4拍子にきまっていて、リズムがない、強弱が全くない、感情がなにもない。こういう音楽は、茶髪のお兄ちゃんおねーちゃんのを相手の番組につかうなら問題ないが、オペラの関係の番組をぶちこわすこと限りない。

 

日本ではこういう問題をNHKあてに指摘する人はほとんどいないであろう。東京の知り合いに、どう思うかを聞いても、答えは、(1)無関心、(2)NHKのやっていうことだから仕方がない、(3)NHKはつまらないから全く見ない、のどれかである。

 

このようなテーマソングと、「シンシカ、シンシカ、シンシカ、シンシカ、」の背景音が、この番組シリーズの決まった形式というなら、茶髪のお兄ちゃんおねーちゃん相手の番組の設計なのである。その中でのオペラ指揮者の番組は、このような聴衆にも、日本人オペラ指揮者の活躍を知ってほしいということが、番組の目指すところと解釈しなければならない。いいかえれば、こういう層に当てはまらない人向きではないから、不愉快になるよりは見るなと言うことにもなる。

 

いまや、NHKは世界中に放送されている。私のいっていることが、正しいかどうか、世界的水準で考えていただきたい。また、日本国内でも、オペラや音楽を愛好する人たちが、この問題をどう受け止めているか、調査をしていただきたい。

 

私には、NHKの番組の最終仕上げをする監督と背景音係が大きな権限をもちながら、内容をよく理解せず、聴取者(audience)層をどこに定めるかも考えずに、ただ仕上げているのではないかと疑われる。NHKはoxymoronではないか。

 

米国PBSには、音楽家たちの活動を収録したすばらしい、非の打ち所のない番組が多くある。参考にしていただきたい。

 

NHKには、たとえばアシケナージなど世界的に有名な音楽家に、テーマ音楽背景音楽を依頼することもおおいであろう。そのような機会に、意見を聞いていただきたい。また日本の中にも、このような問題を、きちっと解決できる人は多く居る。

 

中村省一郎 

米国コロンバス市在住

(2-2-2007)