20013

西村 三千男 記

科学の光(LED)で野菜栽培

 

PASONA O2」をご存知か?

東京駅丸の内北口の近くに25階建ての大手町野村ビルがある。旧大和銀行本店ビルで

ある。そのB2Fに人材派遣の「株式会社パソナ」が「人工光による植物栽培」(稲、野

菜、花、ハーブなど)のモデル工場「PASONA O2」を展示しているのをご存知だろうか?

この場所は旧大和銀行の地下大金庫の跡である。B2Fの全面積を使っていて、モデルの

規模もそれなりに大掛かりである。

 

 数年前、当時の小泉首相、竹中総務相など政官財各界の錚錚たる大物が見学に来訪して

マスメディアの話題となった。アイソマーズ仲間の藤牧さんも昨年末見学されたそうだ。

 

「何故、人材派遣会社であるパソナが?」「何故、今?」の疑問には後で応えよう。

 

東京ディズニーリゾートがLEDで野菜栽培

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは園内のレストランで使う葉物

野菜をLED光栽培で自前供給すると発表して話題になった。100%子会社(舞浜ビジ

ネスサービス)が約10億円投じて野菜工場を建設し、今春4月に初出荷、今年の年間生

産は350トンを見込んでいる。3年後には系列のホテルへの供給も含めて、全量自給を

目論んでいる。

 

コスモプラント社(静岡県袋井市

この他にも各地に野菜プラントが相当数(多分全国に数十カ所)誕生している。それら

は概ね静岡県袋井市のコスモプラント社の設計または同社直営である。経験とノー・ハウ

が同社に蓄積されている。

 

光源装置の進歩と光源コストダウン

野菜工場が活況である理由、「何故、今?」の答えはLED光光源の技術進歩である。

新たに植物栽培用光源として開発された水冷式LEDパネルランプによって、トータルの

光源コストが大きく削減出来たのである。LEDの高い発光効率とロングライフがグッと

効いているようだ。発熱によるエネルギーロスが少ない。ランプのライフは4万時間を超

えてきた。従来の白熱灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプなどに比べて、ライフサイクルコ

ストが遙かに少ない。野菜工場が採算ラインに近づいてきたようだ。

 

パソナの狙い

パソナは農村向けに人材を派遣する「援農隊」を事業分野に加えた。パンフレットでは

単純に「パソナは農業で働きたいと願う方の就農をサポートします.」とソフトである。

その本心は「都会に住むニート達に農業と出逢うチャンスを提供し、ニートの居場所探し

を助け、農村の人手不足を解消し、国家としての深刻な社会問題の解決に貢献し、パソナ

にとってはビジネスチャンスとなる.」一石四鳥の狙いである。パソナの志の高いことを

知って、要人達が次々と見学に訪れるのである。

 

サイエンスの側面は?

植物の葉が緑色であるのは、植物が光合成に主に光の赤色成分を吸収して使い、不要の

緑成分を反射するためである。太陽光や白熱灯は広い波長範囲の光成分を含むが、LED

光は狭い波長範囲を選べる。赤色のLED光で栽培するとレタスの成長速度が白色光の約

4倍にもなることが知られてきた。

 

ここにサイエンスやテクノロジーの出番がある。LED光は単純に植物の成長速度に影

響するだけではない。タンパク類やビタミン類などの栄養成分の生成はどのような影響を

受けるか?促成栽培とポリフェノール類の生成とは相反するかも知れない。光成分の与え

方のプログラムの他に、雰囲気中の二酸化炭素濃度の調節プログラム、根から与える肥料

成分のプログラム、それらの交互作用まで考えると研究分野は極めて広い。研究はいま始

まったばかりで広大な未知の分野が残っている。

 

 この領域の研究キーマンの1人は玉川大学農学部助教授の渡邊博之氏(三菱化学の総合

研究所から転身)である。コスモプラント社系の植物工場の技術を指導されている。機会

を得て2006年2月に渡邊先生の講演を聴いたことがこの分野に関心を持つキッカケと

なった。「PASONA O2」を往訪見学したのもこの講演を聴講してからであった。

 

 

                       おわり