2007.3.8

西村 三千男 記

中村さんの「自然発酵二話」を読んで〜その2

 

前回予告しました古いエッセーをまとめました。

これらは1992年に書いたものです。当時勤務していた電気化学工業の研究所長として

週に1回、所内の電子掲示板に掲示していました。ヘッディングを削除して日付だけにし、

内容は修正も編集もしていません。

 

(1)

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                        1992.4.25

            神原先生 の ヨーグルト  Friday - Focus 4.24

 

   神原先生 は 来年 88才の「米寿」を迎えられ,その記念随筆集として「呆けず,

転ばず,風邪引かず」をご執筆中だそうです。

 

   先日の技術懇談会の際,健康法を質問したところ 種々実行されている中の異色は

コーカサスのヨーグルトを常用されていることでした。  数十年前に教え子の某氏が

その地方を旅行したお土産として 現地で日常的に食べられているヨーグルトを一つ

先生に持ってきた。それを種ヨーグルトにして次々と醗酵させて毎日食べて居られる

そうです。

 

   その話を聞いて興味を持ち「種」を欲しがる人には 「分家してきた。 そこの奥さ

んがキチンとした人だと今も続いているけれど,奥さんがいい加減な場合は直ぐダメ

にしてしまいます」と云われました。「まるで 糠味噌のようですね」と聞けば「その

通りです」と。

 

   実は私も十年以上も前から 自家製ヨーグルトを継続しております。 但し,コーカ

サス等の銘柄ではなく,市販のプレーンヨーグルトを「種」にしており 1Lの牛乳か

らのヨーグルトを4日で食べる習慣です。私の場合,器具の熱湯滅菌から始めますの

で 操作の信頼性の点で家内には任せ切れず,自分で全てやります。

 

   先生にこのことを申し上げましたら,次回コーカサスの「種」を分家して下さるそ

うですが,そうなると緊張しますねぇ。

 

                                                        (おわり)

 

(2)                      

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1992.5.15

           ヨーグルト の 雑学 ーその1ー   Friday - Focus 5.15

 

  神原先生のヨーグルトをご紹介しましたところ,思いがけなく FURUKAWA さんから

Reply を頂戴しました。 ご質問には 即日 情報提供 済みですが, ここは公開 FORUM

ですから それを公開すべきかと思います。 当研究所には醗酵の権威が多数居られて

誤謬は厳しく指摘されそうですので,事前に このReply を権威筋に検閲して貰いまし

た。

 

   京都大学時代に醗酵工学の講義で聴いた高田亮平先生のヨーグルト講話を, 何故か

今も鮮明に覚えています。

 

   「ブルガリアの長寿村を調査したロシア人 動物学者/医学者 が,長寿はヨーグル

ト飲用によるものと結論した。 その後の学問の進歩や研究で ヨーグルト飲用 と長寿

の因果関係は次のように説明出来る。」

 

   「 老化の機作は 腸内の雑菌異常醗酵で生成するヒスタミン類の生理作用による。

この異常醗酵は腸内のpHを酸性にすることで抑制出来るが,酸を経口摂取しても胃

部を出てすぐに中和されて無意味である。 では腸内で酢酸醗酵 や 乳酸醗酵 させて

酸性化しようと,普通の酢酸菌や乳酸菌を摂取してもまた 胃酸で滅菌されてしまう。

ところが,ブルガリア地方のヨーグルト中に発見された ラクトバチルス・ブルガリカ

ス は耐酸性で胃酸に耐えて 腸に到達出来る。 腸内で増殖して そこのpHを酸性化

することで 酸性に弱い雑菌による異常醗酵を抑え込む。これがいわゆる 整腸作用で

あって,不老長寿につながる。」

                                                           (おわり)

 


 

(3)

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1992.5.21

           ヨーグルト の 雑学 ーその2ー 〈 Friday - Focus 5.22

 

  プレーンヨーグルトの大手御三家 は 「明治ブルガリア」「森永ビヒダス」「雪

印ナチュレ」です。 このうち 明治 は 紙製容器 であるのに対して,森永 と雪印

は酸素バリァー性 の容器を使用しています。 森永の内蓋は 一見して紙ですが裏

面が酸素バリァー性の塩化ビニリデンでコートされています。

 

  「森永ビヒダス」は商品の容器 や 新聞広告コピーに ビフィズス菌の効能を次の

ように解説しています。

 

  「どうしてビヒダスがいいのでしょう。

生きて腸ではたらくビフィズス菌がはいっています。

ビフィズス菌は赤ちゃんの腸内に多くすんでいる乳酸菌で,悪い菌とたたかって,

腸内のコンディションを保ちます。 大人になると減っていきますが,とても大切な

菌なのです。  "ビヒダスヨーグルト”は,健康を守るビフィズス菌を生きたまま,

おなかにお届けします。」

 

  「ビフィズス菌は 腸内細菌群 の中の善玉 で 嫌気性の乳酸菌 である。これが増殖

すると腸内の雑菌性異常醗酵が抑制 される。 "森永ビヒダス" は通常のヨーグルト菌

の他にこのビフィズス菌を配合しているので 整腸作用に優れ,健康 と 美容 を増進

する。」

 

  食品包装材料の権威 雪印乳業 の 牧野輝男 氏 の講演で 謎解きが出来ました。

 

"雪印ナチュレ" に配合してある ビフィズス菌は 嫌気性であるため 酸素バリァー

容器を採用している。 開封して 数時間で ビフィズス菌数は半減以下となるので,

開封したら 一度に食べ終わるようお勧めする。」

 

   明治ブルガリア は ビフィズス菌は配合していなくて,古来のブルガリアヨーグル

ト菌は嫌気性とはいえ酸素耐性があるため 酸素バリァー性容器を必要としない。

 

                                                   (おわり)

 


 

(4)

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1992.5.28

           ヨーグルト の 雑学 ーその3ー 〈 Friday - Focus 5.29

 

   Metchinikoff が ブルガリアの長寿村で 発見した ヨーグルトは 山羊乳からの

ものと聞きました。 神原先生のコーカサス土産は本来的には 羊乳 か 馬乳 由来の

ものと想像します。 モスクワで朝食メニューにある 酸っぱい乳「ケフィール」も

元来は 馬乳 のところ,現在では牛乳で代替えされているようです。

 

   現在,日本で市販されているヨーグルト類の原料は殆ど全て 牛乳 か 脱脂粉乳

でしょう。 家庭で牛乳からヨーグルトをつくるのは,ごく簡単です。 清潔な牛乳

に「ヨーグルトの種」または「種ヨーグルト」を よく混合して 人肌くらいの温度

で約10時間保温すれば出来上がりです。

 

   便利な培養容器 と 保温器 が市販されています。 私のは 東芝 の 「ヨーグル

ター」で 内容積 1L のものです。 その取り扱い説明書 の 指示 に忠実に,先ず

容器 と スプーン を熱湯滅菌 します。 封切りの プレーンヨーグルト約 150 CC

を封切りの牛乳 と混合して 1Lにして保温し,好みで 8ー10時間 後に取り出

して,放冷後 冷蔵庫 に入れるだけです。

 

   最後に,私が市販ヨーグルトを種にして,つまり神原先生のように銘柄もの で

もないのに,自家製に励む理由を述べます。 全般に, 日本の乳製品の安全性,信頼

性は高くないと思っています。 プレーンヨーグルトも 単に 糖無添加 というだけ

で 他の増粘剤 などは加えられていると疑っています。 少しでも 食品添加物の摂

取 を減らすための 個人レベルの努力 だとご理解下さい。

 

                                                     (おわり)


 

(5)

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1992.6.4

           ヨーグルト の 雑学 ー蛇足ー 〈 Friday - Focus 6.5

 

    近年,健康食品 として オリゴ糖 が喧伝されています。 オリゴ糖類を商品化

したり,それらを配合した健康食品を売り出したり 賑やかなことです。

 

    これを摂取するとヒトの胃部 では分解されずに腸内細菌に供給され,しかも

ビフィズス菌のような善玉細菌を増殖させる効果が高いとされています。つまり

ビフィズス菌配合のヨーグルトを食べるのと同様の効果が期待出来るのです。

 

    生化研が共同研究していた 明治製菓(ヨーグルトは明治乳業 で これとは別会

社) は バイオテクノロジーで フラクトオリゴ糖を事業化している。 同社の薬品

総合研究所の I 博士 からこの話を聞いたのですが 「大きな声では言えませんが

実はオリゴ糖 には 欠点が有るのです。 食べると整腸作用はあるのですが,腹が張っ

て オナラが よく出るのです。 臭いはしないのですが,若い女性にはあまりお奨め

出来ません。」

 

                                                        (おわり)