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メタノールはどれだけ飲むと危険か

(Abstract: All wines and liquor contain a small amount of methanol. This article describes how much drinking of wine and distilled liquor would cause loss of eyesight and even death.  By Sho Nakamura)

 

10ml(または10cc、約小さじ一杯)で失明。

30ml(または30cc、約大さじ一杯)で致死。

 

メタノール(メチルアルコール)は体内でフォルムアルデヒドにまず酸化され、さらに蟻酸になる。どちらも猛毒である。

 

果物ジュースやワインや蒸留酒にも微量ではあるがメタノールが入っている。ジュースにメタノールが入っている理由は、果実の中のペクチン(植物繊維)が、同じくジュースに存在するペクチナーゼ(分解酵素)によって分解される結果である。その量は約30mg/L前後であることが報告されている。実際、果物自体にメタノールが微量にふくまれているから、避けようがない。

 

果実から作られたワインには当然メタノールが入っているわけだが、穀類から作られるアルコール飲料にも微量のメタノールが存在する。これはアルコール発酵の際、穀類や果実の中の繊維質が分解してできるためである。おなじアルコール飲料でも、果実から作られるワイン中のメタノールの方が穀類から作られるアルコール飲料より多量である。ブドウからつくるワインのなかでは、皮ごと発酵させた場合は、皮なしで発酵させた場合より高い。つぎの表は、ある調査によるフランス産とアメリカ産のワインについて比較している。

 

フランス産

白ワイン 32~78mg/L

赤ワイン 128mg/L

チェリーワイン 276mg/L

 

アメリカ産

ワイン 50~325mg/L

 

蒸留酒の場合は、初溜(蒸留の一番はじめに取れる蒸留酒)に最も多くメタノールがふくまれ、これを捨ててしまえば、そのあとの蒸留酒の含有量は格段に減るといわれているが、業者がどのように扱っているかは知る由もない。ワインと同じ調査報告による蒸留酒のメタノール含有量は

 

バーボン 55 mg/L

ラム   73 mg/L

 

リットルあたりはワインよりも少なめになっている。しかも、蒸留酒はエチルアルコールの度がワインの約3~4倍あることを考えれば、エチルアルコールに対する比は蒸留酒の方がはるかに少ない。

 

米国のFDA(食料医薬品管理局)ではアルコール飲料中のメタノールの量は体積比で0.1%、つまり1Lあたり1ml(約1000mg)なら安全としている。だから、さきにしめしたメタノール含有量の比較ではもっともメタノールの多いチェリーワインでも、その3分の1なわけで、かりにそれを何本飲めば、失明の10mlになるかといえば、30本。普通のワインでは約100本、悪いワインで約30本という計算になる。

 

一回に飲むワインの量がこんなに大量でなくても、毎日のみ続けると、その害は体内に蓄積されていくことも指摘されている。

 

メタノールは悪酔いや二日酔いの原因であることが明らかにされている。有害な蟻酸が出来る上、メタノールはエタノールよりも体から排出される速度が10倍くらい遅い。蒸留酒の方が悪酔いや二日酔いがすくないのは、同じエタノールあたりのメタノールを飲む量が少ないからであると説明できる。

 

おなじ蒸留酒でも、果実から作った蒸留酒は、穀物からのに比べてメタノールの量が多い。日本で検査されたフランス製のブランデーで6g/Lのメタノールが検出されたことがあるという。これだと2Lのブランデーを飲むと、「10mlで失明」という限界をこしてしまう。もっともブランデーを一度に1Lは飲めないし、もし飲める人がたら死ぬ事を気にしないアル中の人であろう。

 

日本酒に含まれるメタノールのデータはいまのところ持ち合わせないが、普通の米からの日本酒と、米を小さくなるまで磨ぎすましてつくる吟醸酒では、後者の方が植物繊維が少なく、メタノールも少ないであろう。二日酔いは吟醸酒の方が普通の酒よりは少ないことは、よく経験することである。

 

中村省一郎 (2008年)