違法火酒の安全性

世界各地を旅行していると、思いがけないところでバーなどで販売されている違法火酒に出くわすこともあるだろう。

自家製火酒は違法であっても、別のところでも記すように自家製でなければできない独特の火酒であったり、またその地方の伝統であったりすることも多い。その一方、危険な火酒があることも理解しておかなければならない。違法火酒に毒物が混入している場合があるからだ。理由は二つの可能性がある。第一は、違法火酒は安い原料と安い器具を用いて作られることが多いので、そのための混入である。第二は、違法火酒の量を増したりアルコール度を実際よりも高く見せるために異物を混入する場合である。

第一の場合に多いのは、扱いの悪い穀物にはAspergillus flavus Aspergillus parasiticusなどの毒性のカビが生え、貧困な国や地方で中毒をおこすことがあるが、そのような原料が火酒の原料に用いられた場合と、蒸留器の凝縮器に車のラジエーターがよくもちいられることである。ラジエーターは熱交換器なので、すぐに凝縮器として使える利点があり、また廃車から取り出したものならただ同様で入手できるため、多くの違法火酒業者が用いる。ラジエーターには凍結防止用の液つまりエチレングリコールが入っていて、完全に洗浄しないと、それが蒸留酒に混入してくる。さらにはラジエーターの薄板は鉛入りのハンダで張り合わされているので、鉛が蒸留酒に混入してくる可能性がある。

第二の場合、違法火酒にはメチルアルコールが混ざっていることがある。その理由はメチルアルコールのほうがエチルアルコールよりも安価なことで、量を増やしたい業者はメチルアルコールを混入するのである。少量なら命には別状なくても、これを多く飲むと失明や死亡にいたる。歴史的には、米国の禁酒時代に多くの違法火酒に混入され犠牲者が多くでた。しかし今日でも貧しい地域や国ではこのような不徳業者が後を絶たないことが報告されている。

また同様にひどいのは、アルコール度が高いほど味が鋭くなるのを良いことに、アルコール度を高くみせるため、舌がしびれるような物質、たとえば自動車の鉛電池につかわれている硫酸を混入する業者もいるという。少量でも胃腸の表壁が破壊されて重い病気にかかるか、死亡にいたるであろう。(2008年8月)