2008.6.28

西村 三千男 記

 

再生医療のこぼれ話(武山さんの尻馬に乗って)〜その2

 

製造物責任PL

 

東レリサーチ社の新春講演会に毎年ご招待を受けている。1月下旬頃、魅力的な講師陣

を揃え、経団連会館を会場に、産官学から多数のゲストを招き、第1部は講演会、第2部

は立食パーティが恒例となっている。同社は東レの子会社であり、日本で最大、最高レベ

ルの分析センターである。

 

第24回(2002.1.17)の講師はナノカーボンチューブの飯島澄男氏と(株)

日立製作所常務取締役研究開発本部長の中村道治氏であった。経団連会館1Fのクローク

で偶然アイソマーズ武山さんに出会って、折角だからと受付で隣の席を貰い、並んで聴講

した。他にアイソマーズ藤牧さんも参加されていて第2部立食パーティで顔をあわせた。

 

中村常務の演題は「安心、健康のためのR&D」であった。慶応大学医学部?と共同開

発している(遠隔)手術補助ロボットの紹介があった。講演の内容は殆ど忘れてしまった

けれど、PL法(製造物責任)の話題が印象に残っている。「先端的な医療用ロボットの

開発は米国のベンチャーが世界をリードしている。産業用ロボット技術では世界でトップ

ランナーである日本のメーカーが、先端的医療用ロボットの開発に逡巡するのは何故か?

それは、経営トップがPL法のリスクを怖れるからである.成功したときの利益に較べ、

リスクが大き過ぎると判断しがちである.」と言うような論調であった。

 

休憩時間と立食パーティで武山さんとその点を議論した。武山さんはその頃、中村講師

の指摘する「PLリスク」を回避する経営判断で苦い経験をされた直後であったらしい。

後日、具体的にお聞きしたが、新規な人工血管の研究開発プロジェクトマネージャーとし

て、医大との大規模な治験でも有望な成果を得て、最終段階に辿り着いたところで、経営

トップからプロジェクト中止を命令され、無念の思いで終戦処理に当たられたとのことで

あった。その時点で、西村は既に現役を引退して、顧問室に常勤していた。現役の最終の

頃、電化ヒアルロン酸の分子量が大きい特徴を活かして、関節炎の消炎鎮痛用の注射液だ

けでなく、人工臓器の研究開発も議論していた。火傷治療用の人工皮膚とか乳ガン手術で

失った乳房を再建するための人工バッグとか私の想定外の話題を持ち込まれて、それらに

翻弄されたこともあった。

 

 「裁かれた豊胸術」とA大学医学部・B教授

 

ここから「世間は広いようで狭い」・・・という「こぼれ話」をご披露しよう。上述の

新春講演会から旬日を経ずして所用で電化の研究所を訪ねた。時の研究所長から、ヒアル

ロン酸の近況を聞いた。「A大学医学部のB教授から人工血管の研究に協力を求められて

いる.ヒアルロン酸の細いストランドを人工血管の「足場材料」とする研究である.B先

生は東レと組んで別の方法の人工血管を研究していたが中止となった.因みに、B先生は

米国ダウ・コーニング社の豊胸手術用シリコーン・ジェルが米国版PL法で裁かれている

件にお詳しい.その事件簿の翻訳本を数冊頂いている.西村さんも1冊どうぞ.」と言わ

れた。

 

 これは、先日の新春講演会で武山さんから聞いた話と一致するとピンときた。武山さん

に問い合わせたところ、早速、前項に述べた一連のストーリーを長い長いFAXで詳しく

解説して下さった。

 

(注記:A大学もB教授も、事件簿の翻訳書名も、実名で記述しても何ら支障は無いよう

に思われるが、念のため伏せた。誰かに迷惑を及ぼしてはならないからである。

HP掲載のエッセーの一部がグーグル検索でヒットすることを、編集の中村さん

が最近発見され、連絡して下さった・・・こともあるし・・・。)

 

追記:このテーマは2回に分けて掲載する予定で始めたが、クドクドと書きすぎて長く

なってしまった。あと数回連載させて頂く。ご容赦を。

(以下次回)