2008.7.8

西村 三千男 記

 

再生医療のこぼれ話(武山さんの尻馬に乗って)〜その4

 

工学部と医学部の協力

 

再生医療工学の研究で成果を上げるには、医学部側のニーズと工学部側のシーズを的確

にミートさせ、研究テーマとしてどのように融合させるかが大切である。それは初回にも

述べた。日本再生医療学会の昨年度総会の会長として武山さんが紹介された赤池敏宏先生

は東工大生命理工学部の教授である。東大で鶴田禎二先生の門下であるからルーツは化学

者である。早くから信州大学教授を併任されている。

 

赤池先生とは現役時代に少しばかり接点があった。やはり、電化ヒアルロン酸のご縁で

あった。その頃の或る席で、信州大学教授と併任されている意味を問うたことがある。答

は「東工大には医学部がない.信州大には医学部があって研究を進め易いのである.」と

説明された。医用高分子の分野の先駆者として著名な中林宣雄先生(東京医科歯科大名誉

教授・紫綬褒章)は我々と同年代、即ち筏義人先生とも同年代である。高分子同友会の勉

強会に、ご本人も門下の研究者も、何度かご出講頂いた。中林先生は、赤池先生と逆の意

味でのご不便を経験されたのではないかと想像している。東京医科歯科大には工学部がな

いからである。

 

最初のステップ

 

さて、1980年代の或る時期のフィクション。A大学の再生医療工学研究室で人工臓

器を開発研究していたと仮定する。B教授は工学部高分子系、C助教授は医学部系で臨床

医でもある。旧帝大系工学部と医学部特有の封建的な旧弊も残っているが、統一された指

揮命令系統のもとにあったとしよう。

 

 有望な生体適合性高分子を素材とする有望な人工臓器が試作されたとする。その一番最

初の臨床テストはどのように決断されたか?インフォームドコンセントやその他の倫理的

な手続きをクリヤーしていれば、B教授はC助教授(臨床医)に臨床テストを指示出来た

か?その答は「ノー」である。しかし、C助教授は自主的な判断でなら、試作品であって

も、主治医として自分の患者に対してその臨床テストを実施することは可能であった。

 

 一般に主治医は治療法に関して裁量権がある。例えば、病院の勤務医は自分の患者に対

する治療法について、上司(医局長や病院長)から指示は受けることはない。指示に従う

必要がないとも云える。院内の倫理的な手続きやインフォームドコンセントをクリヤーし

ていれば、未承認の新薬や新治療法であっても、自分の判断で試用出来るのである。

 

全ての新薬や新治療法の「最初のステップ」は主治医の裁量権から出発すると云える。

 

(以下次回)