竜巻(Tornado)

 

竜巻は恐ろしい気象現象で、米国ではロッキー山脈の東側で、テキサス、ルイジアナ、オクラホマ、ミシシッピ、カンサス、テネシー、およびそれらに近接の州におおい。その理由はメキシコ湾で発生し多量の水分と熱エネルギーを含む気流が北向きあるいは北北東向きに流れることが多いのと関係している。このような気流は暴風雨をもたらし、大量の雨を降らせることが多い。北へゆくほどその気流の威力は衰え、アイオア、イリノイ、ミネソタ各州などに被害をもたらすことは少ないのだが、数週間前のように被害がこれらの州に及びミシシッピ川の氾濫をおこすこともある。

 

Intense tornado activity in the United States.  The darker-colored areas denote the area commonly referred to as Tornado Alley.

オハイオで竜巻が起こる回数は少ないが、歴史的にもっともおおきな竜巻の被害の一つはオハイオで起こっている。コロンバスでも竜巻が起こる可能性のあるときには空襲警報のようなサイレンが鳴らされるので、地下室のある家ではそこへ避難する。

多くの竜巻に共通して言えることは、竜巻が起こるまえに雲が空で直径数キロの範囲でゆっくり回りだす(スーパーセル)。その中心から回転の速い雲の柱が地上に降りてきて、災害をもたらす。その直径は約10メートルから数百メートルに及ぶ。竜巻は大気の吸い込み現象であって、低空の大気が上空に吸い込まれてゆく。竜巻は必ず上空で始まりそれが地上に降りてくる。だから回転する空気が最初は地上に降りてくるという専門家すらいるのだが、これは大馬鹿の大間違いで、常に空気の流れは上空へ向かっている。これは見かけは波が右へ動いていても、物体の流れは左向きのことがある流体の本質を理解していないために起こる間違いである。(波の流れと物質の流れが同じ方向のみなのは超音速の流れの場合だけ。)

 

竜巻が海上や湖で起こると、空気ではなく水が吸い上げられて、巨大な水の柱が空向きに上ってゆくこともある。

 

最近竜巻観察と測定が盛んになり科学的なデータが増えたが、なぜ竜巻が起こるか、またどのような条件で起こるかについては異論も多い。発表されている論文にはまったく話にならないような間違った説もあって驚かされる分野でもある。なぜこのような誤った説が出てくるかというと、私の意見ではあるが、竜巻とは流体力学的現象であるのに、気象学者には流体力学の基礎を正確に理解しない人もいて、間違ったことを平気で発言して気が付かないのである。

 

では、竜巻はなぜ起こるのであろうか。答えは、温度の高い気流が温度の低い大気の中に出来ると、温度の高い空気は上昇気流となり、局所的にキノコ雲のような現象を生ずる。上昇気流の下は低気圧になるのでそこへ低空の空気がさらに吸い込まれる。このとき吸い込み口の範囲は比較的狭いので、低空の空気は加速されて吸い込み口を通ることになるが、このときに回転が生じる。その理由は流体の角運動量保存の原理で説明できる。

 

今説明した吸い込まれる低空の空気は、かならずいくらかの角運動量をもっている。流体の角運動量は保存される性質があるが、その結果、狭いところを通るときは回転速度が大きくなる。この角運動量保存の原理はスケート選手の回転のときにも応用される。それは選手が回転の速度を速めたいときは、長くのばした手をちじめるが、そうすれば体全体の半径が少なくなり、角運動量保存が満足されるために回転速度が増す。

 

大気の流れの角運動量を左右する角速度は、北半球ではたいがい反時計回りである。このために、竜巻の回転方向もたいていは反時計回りであるが、反対(時計)回りの竜巻も観測されている。これは、場合によっては竜巻のおこる近傍の大気のながれの角速度が時計回りであることもあるからである。

 

竜巻の回転はコリオリの力の影響と説明する人もあるがこれは間違い。ただし台風の回転はコリオリの力の影響である。

 

竜巻の回転現象は、風呂桶や洗面器で水を流すと渦になって吸い込まれてゆくのと、原理的にはおなじである。風呂桶や洗面器の場合も吸い込み口の圧力は低く、また吸い込み口は狭い。同じ洗面器でも回転は反時計回りのときと時計回りのときがある。あらかじめ水の回転を一方向にしてから栓を抜くと回転はその方向になる。トイレの場合は、回転方向は水の出口の設計によってきまる。いずれもコリオリの力に関係ないのは竜巻と同じ。