米国大統領予備選挙戦の報告(1月23日)      中村省一郎

 

いまこちらでは予備選挙が始まって、州単位で人気投票と、選挙代理人の選出が行われています。在職中は、テレビをゆっくり見る時間がなかったのですが、今回は、米国のあまりにもの落ちぶれようを思うと、見ないではいられない気持ちで、毎日のように変わってゆく選挙戦を見ています。

 

ご承知のように、ブッシュ大統領はイラク戦争だけが頼りで大統領の地位にしがみついているような人(大事なことはわからぬらしい)ですから、米国内は荒れてゆく一方です。サブプライムの問題が世界中に影響を与えていますが、これもブッシュ政権のずさんな金融政策の引き起こしたことですが、不動産バブルの崩壊が原因です。その根底にあるのは、製造産業がほとんどアジア諸国に行き、兵器と航空機以外は、国産の製品はほとんど輸入品にかわってしまい、生産的な職業が米国内にはほとんどなくなってしまったことにあるといえます。(Michigan州やOhio州は工場の多かった州ですが、今はほとんどの工場は閉鎖になり、大きな敷地と建物が売りに出されています。)また、不動産バブルは、9・11のあと、根本的な経済成長をまったく考えないで、ただただ利子を低く保って、株価と不動産価格の低下を防いできた政策への反動でもあります。

 

不思議なことは、米国ではこのことを指摘し、長期的な対策を考える人がほとんどいないことです。連邦政府、特に大統領はごく最近(2週間前)まで、米国の景気は非常に順調と言いつずけてきたのです。その大統領も、一部で景気がよくなくなってきたという言い方をはじめたのですが、そうすると世界中の株価の大幅な下落が始まりました。生産力のなくなった米国ですが、そこが不景気になると世界に大きな衝撃を与えるくらい、世界最大の消費国であるということなのでしょう。

 

米国の製造産業の衰退は何十年前から始まったことですが、連邦政府がぜんぜん手を打とうとしないのはまったく不思議なことです。日本もそうですが、中国やインドは、政府が強力な指導をして競争力を高めているのですが。

 

こういう問題とそれに伴って起こっているさまざまな問題に、大統領候補者がどのような政策を提案し、また投票者がどのように受け止めるかに、大きな関心が高まりつつありますが、どの候補も長期的な対策を提案する人はほとんどありません。

 

民主党、共和党それぞれ多数の候補者がいますが、Iowa,New Hanpshire,Michigan、Navada、South Carolina 州の予備選挙がほぼ終わるにつれ、民主党では2人、共和党では3人の候補者に絞られてきています。

 

民主党では(半分)黒人のObama 候補とClinton夫人候補。この二人は政策はほとんどおなじで、イラク戦争は直ちに停止、イラク戦争で使っている金を社会政策(国民健康保険と貧者救済)に使う。Obama 候補の支持は今のところ非常に厚く、それをやっかんだClinton候補自身とクリントンもと大統領のObamaへの非難発言が激しく、眉を潜める人が少なくありません。

 

共和党では、McCain、Hackabee、Romneyの三人が有力。McCainは74歳のベトナム戦士でかなりの人気があります。正直ものという触れ込みで、連邦政府の歳出を極端に減らすことを約束してはいますが、イラク戦争に関しては現大統領の政策の継続、失われてゆく製造業の職に関しては「なくなるものは仕方がない、職業指導で新しい職を開拓しよう」と言う程度。共和党では一番人気が高いのですが、国家安全の話ばかりで、経済や教育のことは良くわかっていないのではないかという批判も多くなってきました。

 

Huckabeeはキリスト教エバンジェリカ派の元司教でアルカンサス州の知事。この人はIowa州で共和党のトップになったのですが、その後さえません。しかし非常に面白い人で、選挙演説はバス電気ギターをガシャガシャ弾いてからはじめるばかりでなく、ユーモアもあり、税制の全面てき改革により、企業にinsentiveをあたえる、教育制度を全面的に改革する。教育制度では、学校へ行くのが楽しくて仕方がないようにせよというのです。そのためには、art、musicを義務つけることも必要といいます。彼の演説内容は非常に興味深いですが、残念ながら彼の教育制度全面的改革案を理解する人は少なく、また税制改革に賛成する人は非常に若い有権者以外には少ないのです。持家の利点がなくなることもその理由のですし、また子供も、非常に貧しい人も一律の高い消費税を払わなければならなくなることに反対する人が多くあります。

 

RomneyはMassachusetts州の元知事で、企業経験の豊富な人。非常に大きな資産をもち、大統領候補としてはハンサムすぎるとも言われています。Michigan州の予備選挙では共和党の一位になりました。この人の強みは、多額の選挙費を持つばかりでなく、企業経験者として、米国の企業をどう立て直すかについての豊富な意見をもっています。私個人の意見としては、Romneyが大統領になるとよいように思いますが、彼はMichigan州以外ではMcCainほど人気がないのです。しかし、不景気が深刻になるにつれて、国家安全よりも経済に関心が高まってきていますので、McCainに懸念を持つ人がふえており、そうなるとMcCainよりも優勢になる可能性を大いにもっています。

 

米国では、まだまだ、国内がだめになっても、Afganistan やIraq で戦争に勝つほうがよいと考えている人が多いようです。民主党候補者は、黒人のObamaと女性のクリントン夫人が有力という歴史上初めての出来事に、報道陣は沸き立ってきましたが、中傷合戦に嫌気が差してきているのと、この二人の提案する政策で本当によいのだろうかという疑問を持つ人も増え始め、民主党には任せられないという世論も起こりつつあります。予備選挙の結果は州ごとに予測のつかぬほど変わりますので、目が離せない思いです。

 

以上のようなところが、私の見た選挙戦の概要です。このように見てくると、米国の現状は非常に深刻ですが、米国がこれ以上落ち込んでゆくと、その悪影響を非常に大きく蒙る国も多いのではないかとおもわれます。