感想

豚とどんぐりと人間

 

私はどんぐりをいつも二種類に分けて考えていた。一つは人間も好んで食べる椎の実、もう一つは椎以外の渋みが強くて人間にはとても食用には出来ない種類である。とは云え、どんぐりを食べた経験は戦後どんぐり粉の配給というのがあり、渋みのある粉でつくった蒸しパンを食べさされたことがあったが、まずくてどんぐり粉を食べるのはよほど物資が不足しているための、そのとき限りの応急処置とおもえた。しかし椎の実は、小学生のころ、王子駅からあまり遠くないところに住んでいた祖母の家のすぐ近くの神社の境内に大きな木があって、それが椎の木であった。だから秋に祖母の家に行くと椎の実を拾っては炒ってもらって食べたものだ。アメリカにも椎の木がある。それは、筆者の勤めていた大学の機械科の建物からさほど遠くないところに植わっていた。秋に実が落ちていたので拾って見ると椎そっくりなので、持ち帰って炒ってから割ってみると、実の中はなんと赤黄色であった。食べてみると、渋みはなく甘みがあって、まさに椎の実であった。

 

豚がどんぐりを好むということは奇妙に聞こえたのだが、どんぐりというものと豚に関して知らないことがたくさんあるのだろうと思い、少し調べた。

 

アメリカのテネシイ州の東端にスモーキーマウテンという山の国立公園があり、そこに野生の豚がたくさん生息している。これらの豚は、もとから野生の豚ではなく、農家から逃げ出した豚と、原住のイノシシが混血の子を作り、その数が増えたのである。彼らの中には、家豚でしかいない白豚の顔の模様をすこしだけ受けつでいるのもいるという。食べ物は、蛇、トカゲ、鳥の死体、野生の植物などをたべるが、最も好んで食べるのは栗、どんぐり、胡桃などの木の実であるという。だから、豚がどんぐりを好むというのは、イべリヤ半島の豚だけではなく、豚の本来の習性であることがこのことからわかる。

 

どんぐりと人間の関係も面白い。どんぐりは樫の木の種でありが、一般的にいって、葉が白っぽい色の樫の木のどんぐりは渋みが少ないという。その反面、葉の色が濃く、茶色っぽい色の葉の樫の木のどんぐりは渋みが強い。しかしいずれの場合も渋は水に何度もさらすことで取り除くことが出来る。

 

人類の歴史には、穀物ではなくどんぐりを食べていた時代があったという。古代人の遺跡からの出土品から判明している。そういうわけで、椎の実しか食べられないと思っていたのは、無知のゆえんであった。

 

さて、最後に豚の秘密を一つ書いておこう。それは、われわれ人間が食用としている動物の中では、豚が一番人間に近いのである。豚は人間の食事はなんでも食べるが、牛、羊、鹿、馬などは人間の食事には興味を示さない。牛や鹿の目は暗闇の中で光るが、豚の目は光らない。これら光る動物の網膜は金色で、網膜の形は5角形になっているが、豚の網膜は黒で円形にちかく、大きさも人間の目に近いため、目の動物実験をするときは豚の目が用いられる。

 

中村省一郎  10-10-09