2001212

西 村 三千男 記

 

藤田英夫著「大阪舎密局の史的展開 京都大学の源流」

 

伊藤一男さんの「洛禎OB会(その2)」参照。

その中で鶴田禎二先生が引用紹介されている

藤田英夫著「大阪舎密局の史的展開 京都大学の源流」(1995、思文閣出版)

を東大図書館(本郷)で閲覧した。

 

この書物はアイソマーズ通信2007年号掲載の拙文、

「アイソマーズ・ドイツ化学史の旅パート2の参考資料」

リッテル(Hermann Ritter,182874)とワグネル(Gottfried Wagner, 183192)

の中で引用した

「日本の基礎化学の歴史的背景」

(昭和59年、京大理学部・化学・日本の基礎化学研究会編、非売品)

の姉妹書または後継書に位置付けられる。

 

 著者の藤田英夫氏について

1948年生まれ。

京大教養部化学教室で技術職員として勤務しながら、立命館大学の法学部

(1966)、理工学部基礎工学科(1971)を卒業。

1968年より京大理学部故出口安夫教授に師事してESR分析の研究者となる。

次項に述べる経緯から化学史研究が第2専攻となり、

化学史学会の(現)評議員。

 

本書誕生の背景

藤田氏は、1984年、京大理学部故後藤良造教授の指揮の下で上記「日本の

基礎化学の歴史的背景」の編集の実務に携わった(同書の編集陣、分担執筆陣の

リストに藤田英夫氏の名前はなく、文献リストにのみ名前が掲載されている)。

この辺の事情を著者ご自身が本書の「あとがき」の中に詳らかに述べている。

この時に蒐集した資料を基に化学史研究を重ね、折々に研究成果を発表してきた。

本書の序文で著者は「それらを集大成し、あらたに数編の論稿を添えた」と述べて

いる。

さらに、「あとがき」では、「ESR発見50周年の年に、またまもなく迎える京

都大学100周年記念へのプレゼントとして本書を上梓する」喜びをも語っている。

その「あとがき」は阪神淡路大震災の直後に「宇治の里」で書かれている。

 

本書の内容

幕末から近代への勃興期の関西における化学史を網羅している。

伊藤さんがアイソマーズ通信に連載中の洛禎OB会の話題と重なる。

大阪舎密局が第三高等学校に変貌する際に大阪ではなく京都に立地することになった

経緯も書かれている。

先行本の「日本の基礎化学の歴史的背景」も本書も、京大理学部化学教室の視点から

著述されている。後年、世界に冠たる栄光の時代を迎える京大工学部の喜多源逸先生

の系譜が大きくは扱われていないことに些かの不満を抱くのである。

 

  (おわり)