山中伸弥教授とイチロー

 

武山高之

 

9月15日の朝刊で、イチローの「9年連続200本安打」の記事が大きく報じられた。それに較べると小さい記事になるが、「京大再生医学研究所山中伸弥教授がiPS(人工多能性幹細胞)の研究でのラスカー賞(基礎医学部門)を受賞した」ことも報じられた。

 

この二つの記事には共通点がある。ともに、忘れられかけていた昔の成果が、蔵の中から引っ張り出され、読者の目に曝されたことである。

 

イチローの記録達成により、108年前の記録保持者であるウィリー・キーラーという選手の名前が、蔵の中から引っ張り出された。

 

山中教授が受賞したラスカー賞は医学研究者なら誰でも知っている米国で最も権威がある医学賞である。この賞の受賞者からノーベル賞が出る確率は極めて高い。今回の山中教授は、英ケンブリッジ大のジョン・ガードン博士との共同受賞である。

ガートン博士の研究は半世紀前の「アフリカツメガエルに関する研究」である。山中教授の研究により、ガートン博士の半世紀前の成果が引っ張り出され、受賞となったのである。

昨年415日、西村さん、藤牧さんと3人で、千駄ヶ谷の津田ホールで「iPS講演会」の聴講に行ったときは、山中教授、ガートン博士ともう一人、「クローン羊ドリーの研究」を指揮した英ウィルムット博士も功労者に加わっていた。しかし、今回のラスカー賞では、ウィルムット博士は対象から外れている。

 

昨年のノーベル化学賞では、下村脩博士の「オワンクラゲの緑色蛍光タンパクの研究」も半世紀前になされたものである。マーティン・チャルフィーとロジャー・Y・チェンという二人の研究者がこのタンパクを医学研究ツールとして発展させてため、下村博士の研究も受賞と対象になった。下村博士の受賞も、いわば後輩からの贈り物である。

 

同じく昨年の、ノーベル物理学賞された南部陽一郎博士の研究も半世紀前の成果である。小林・益川両博士の研究成果も30年前のものである。

この理論が、巨大加速器の実験で漸く証明されて受賞の対象になったことを考えると、これも後輩の実験物理学者からの先輩たちへの贈り物と言える。

 

アイソマーズ諸氏の中には立派な学者が多い。後輩の誰かがあなた方の研究成果に再び大きな光を当ててくれる機会もあると思う。

 精々健康に注意して、長生きされることが大切である。  (2009.9.16記)