サンブーカ村の宿

 

フィレンツェでの宿は市内ではなく20kmほど南のサンドナト(San Donato)という村のB&Bに2日の予約がしてあった。コロンバスの友人が彼の父親の誕生祝いにイタリア旅行をしたとき泊まったところで、非常によかったのでぜひと云われ決めたのであった。道順は地図の上では分かっていたつもりであるが、実際にフィレンツェの近くに来て、いきなり大きな料金所を通り過ぎると高速はそこが終わりで非常に複雑な分かれ道がいくつもあり途方にくれた。しかし、考えてみると料金所にくるすこし前にローマ行きの分かれ道があり本当はその道に入って南に約10kmは走っていなければならないことに気がついた。そこでもう一度高速道路にはいり逆に走ったが、そこからはローマ行きの分かれ道はなかった。仕方がないので、次の出口でUターンをしてもう一度フィレンツェに向けて走り、ローマ行きの道にやっと入れた。そして10kmほど行ったところの出口で料金を払おうとしたら、10倍はして、一夜の宿代に相当する料金である。こんなに高いのは間違いではないかと文句を言ったら、罰金だという。そういえばUターンをしたとき、料金所の手前でやってしまったのを、料金所(のコンピューター)は知っていたのである。

 

サンドナトの村は、13世紀以前に立てられた石作りの建物ばかりの小さな村で、宿はその村の中心の広場のすぐ横であった。これでやれやれと思ったのが早すぎた。宿の女主人は当惑した顔で、もう部屋はないといったのである。明日の部屋は取っておくからかんにんしてくれという。1月以上も前に予約し、インターネットとファックスで確認しておいたのにと苦情をいったが、満杯になった宿ではどうしようもなかった。近くでそれを聞いていた年配の女が、うちも宿で、ほんの2~3分のところにあり、空いているからついて来いという。あとで気がつたのだが、どうやらあふれ客を待ち伏せていたらしい。

 

その広場を出ようとしたら、すでに夕暮れに近く、一本道の石畳の道路にはレストランがテーブルを道の半ばまで並べていて、通れない。3つほどのテーブルを、客と一緒に動かしてもらって、やっとの思いで、出られた。

 

先導の年配の女の乗った車は、古く汚らしかった。2~3分ということだったのに、10km走ってもまだ着かなかった。サンブーカ(Sanbuka)という村の中心を通過し、舗装のしていない細い道を埃を上げながら行くとやっと鉄門のある一軒家にたどりつた。中は意外と広く、農家の大きな建物であった。部屋に通されたが、すべて石作りで古いが、これも旅の偶然と納得することにした。

 

女主人がやってきて、(B&Bなのに)うちでは朝の食事は用意しないからね、といいながら、宿泊料だけはとって、客が自分たちの住んでいる部分へは入れないように、頑丈な錠前をかけて奥へ入ってしまった。

 

この地方は小高い岡が多く、この家はいくつかの岡にかこまれた谷間に一軒屋だけたった大きな屋方で、門を入ってからかなり奥にあった。庭はその女主人の車からは想像できないくらいよく手入れされていてたが、この世の世界とは思えぬほど静寂そのものであった。息子との二人暮らしのようで、30歳にはならない息子はトラックターを運転して回りの畑を耕すのが仕事のようにみえた。庭にはバラを壁に這わせた来客用の家とか、休憩所があり、庭のすぐ外を流れる小川の岸には野生のごぼうやケシの花が見られた。前庭の家庭菜園にはトマトやエンドウなど常識的な野菜が植えてあった。

 

(サンブーカの宿の写真)