200.1

西 村 三千男 記

連載「ドイツ化学史の旅・パート2のこぼれ話」

 

第22回 日本語の存在感〜日本の存在感

 

少し前の夕刊新聞のコラム。「海外旅行先のホテルで、TVチャネルに日本語放送が

無くて、中国語の放送があった。1980〜90年代、あの華々しかった日本語の存在

感が、今や中国語の存在感に取って代わられたのであろうか。それは、とりもなおさず

日本の勢力の消長でもある」・・・と、誰かが述べていた。

 

 JSTVという海外日本語放送局があって、NHKと民放の人気番組を編集して英国

から全ヨーロッパに流している。商業放送であるから当然CMが付く。NHKニュース

に、例えば日本通運とかのCMを付けて放映されるのである。1980〜90年代の頃

は、日本人ビジネスマンがよく宿泊する一流ホテルの多くはJSTVと契約していて、

日本語放送をごく普通に視聴出来た。それが日本経済の停滞に伴って、それらホテルに

とって日本人ビジネスマンは必ずしも上客ではなくなり、多くがJSTVとの契約を打

ち切ったのであろう。ここ数年はヨーロッパ旅行の宿泊ホテルでJSTVに出会うこと

がなくなった。

 

日本語の新聞でも同様の現象が見られる。ずっと以前、40数年前の私の駐在員時代

には「海外新聞普及(株)」という組織が、日本語新聞をハンブルグへ空輸して、そこ

から再配送していた。駐在員たちは数日〜週間遅れの新聞を回覧して読んでいた。日本

経済の発展とともに、日経新聞や朝日新聞が紙面を電送してヨーロッパの何処かで現地

印刷されるようになった。デュッセルドルフやフランクフルトでは一流ホテルや空港や

駅の新聞スタンドに常備されるようになった。最盛期には日本人コロニーではない普通

の都市の市内の新聞スタンドでも求められるようになった。何処かのインターコンチネ

ンタルホテルのフロントデスクにフィナンシャルタイムズと日経新聞の2紙が宿泊客用

として無料で置かれているのを見て驚いたこともあった。

 

 それが、上記のJSTVと軌を一にして、各所の新聞スタンドから日経新聞が姿を消

しているのである。街中の新聞スタンドだけでなく、ホテルでも、空港でも、駅でも、

入手困難となっている。云うまでもないが、置いていないのは売れないからであろう。

今回の旅では、2008年12月25日、到着翌朝の散歩の途上で滞在先のハイデルベ

ルク中央駅へ立ち寄って、駅書店で日経新聞を探したが見あたらなかった。2005年

の「ドイツ化学史の旅・パート1」の際には、同じ場所で日経新聞は購入できた。

 

 もっと驚いたのは、今回はフランクフルト空港の新聞スタンドでさえも日経新聞が購

入出来なかったことである。それは偶々であるか、それともトレンドであるか。後でル

フトハンザのラウンジへ行き、日経新聞と朝日新聞を読んだ。察するに、現地印刷が途

絶えたのではない。新聞スタンドに置いても売れないのだろう。

 

(以下次回)