7.  縮退物質(degeneration of matter

 

ブラックホールや中性子星を理解しようとすれば、必ず出くわす物性は縮退物質あるいは縮退ガスである。その説明を読もうとすると、必ず量子力学的に説明されているので非常にわかりにくい。ここでは、縮退のわかりやすい意味と、その量子力学的な意味について記する。

 

気体を圧縮して、これ以上体積を小さく出来ない限界近くまで圧縮すると何が起きているか。気体中の原子を取り巻く電子は非常にせまい空間にかさ重なり合って閉じ込められなけばならない。同じ空間に多数の電子が存在できるためには、電子のエネルギーが大きくなければならない。したがって、温度が低くても、電子の運動量は高く、電動度も高くなる。縮退状態の圧力(縮退圧力)をさらに高くするためには、電子をさらに高いエネルギーレベルに押し上げるための仕事が必要となる。このことを、べつの量子力学的な説明によると、つぎのようになる。

 

ハイゼンベルグの不確定性原理によれば、粒子の空間位置の不確定性DXと運動量の不確定性Dpの積は一定である。したがって空間が小さくなればなるほど、運動量の不確定性の幅は増す。つまり平均のエネルギーが増す。

 

もう一つはパウリの排他原理による説明で、パウリの排他原理によると一個の軌道にはスピンの異なる粒子二個しかはいれない。したがって一組以上の粒子が同じ空間に存在するためには、異なる軌道に入らなければならない。したがって、多数の同じ種類の粒子か狭い空間に共存できるためには、低いエネルギーの軌道から高いエネルギーの軌道までつまることになる。

 

縮退により生じる圧力は、分子の衝突やクーロン力による反発とは独立におこることで、正味の圧力は全部を合計したものになる。縮退を起こすような極度に強い圧縮は大きな星の内部で、重力によって起こされる。

 

電子縮退の例は、金属水素、白色矮星。

 

縮退は電子ばかりでなく、陽子だけでできたガス、中性子のガスなどでもおこる。

そして、中性子星、ブラックホール、さらに星の発生から終局の過程を論じるときに欠かせない物性である。