自家製ドブロクと政府の規制

 

自家製ドブロクもアルコールが1%未満なら法律に触れないが、それ以上は免許がないかぎり禁止されている。免許は大量に製造する場合でないと適応されず、小規模にドブロクを作りたい業者には手に入らなかった。だから以前はドブロクを作るのはごくわずかな酒蔵だけであったが、近年は小規模にドブロクをつくる業者にはかなり緩和された。というのは、2002年に構造改革特別区域法というのができて、地方ごとに民宿とか飲食店がまとまって申請すればその区域内では業者はドブロクを作ってもよいことになった。したがって、地方の宿屋とか料理屋でドブロクを売り物するところが現在も増えつつある。

 

日本国内で法律を無視して自家製ドブロクを作る人も非常に多くなった。そのきっかけとなったのは、農村文化協会出版のドブロクのつり方とか、ドブロクを作ろう、などの本がおおきな役割を果たしているであろう。

 

現在の酒造に関する法律は明治戦争後に明治政府により制定され、アルコール発酵が禁止された。それまでは農民が酒を作ることは当たり前であったので、農民の大きな反発があったとともに、政府も摘発に力をいれたのである。これは昭和時代にも同じことで、自家製のドブロク愛好家が検挙され、千葉地方裁判所で一審があった。1986年、二審は棄却され、被告人は最高裁判所に上告したが1989年に棄却された。この裁判が注目されたのは、被告が酒つくりは日本人の基本的権利であることを強く訴えたからであった。ドブロクを作る人のブログなどが増えているが、それ以降検挙や裁判の話は聞いたことがない。

 

このように、庶民文化である酒つくりを厳しく禁止している国は先進国では日本だけであり、酒をつくる権利を庶民が取り戻すべき(日本酒複権)という意見が多くの出版物に書かれている。このような意見の背景には、昔庶民が作っていた酒つくりを庶民に返すのは当然であるのと、酒つくりを庶民から取り上げたために起こった食文化の破壊がある。また、酒税のよる政府歳入は明治時代には33%に昇ったが、現在では2~3%に落ち、自家製の酒がそれに与える影響は無視できるほどわずかなはずであるということも大な根拠である。

 

このように、個人の酒作りの禁止が世界的にみても後進的であること、さらに現在ではビールやドブロクの規制は事実上ないに等しくなっていることから考え、日本酒複権が近い将来に実現することが望まれる。それにはなるべく多くの人に、自家製の酒やビールに、さらに伝統的な日本の料理が酒と切り離せない関係にあることに、関心を高めていただくことであろう。

 

日本の伝統的食文化は、ファストフッドだけではなく、ファストフッド的な生産法により破壊されつつある。若い人は、伝統的な料理法をしらない。ここにもSlow Lifeの考え方が、伝統的食文化を取り戻す助けになる可能性を含んでいる。

中村省一郎 9-22-2009

 

 

密造酒としてのどぶろく」からの参考引用:

明治時代においては政府の主要な収源であった酒造税1940以後、酒税)の収入を減らす要因であるとして、農家などで自家生産・自家消費されていたどぶろく作りが酒税法により禁止され、現在に至っている。しかし家庭内で作る事のできる密造酒でもあるため摘発は非常に難しく、米どころと呼ばれる地域や、酒を取り扱う商店等の少ない農村などで、相当量が日常的に作られ消費されていたとする話もある。むしろ、実際の禁止理由は日清日露戦争で酒税の大増税を繰り返した際にその負担に耐え切れないとする醸造業者に増税を許容してもらうための一種の保護策であったと考えられている。