鱲子

 

  カラスミというのは昭子の親が好きだったという話は聞いたことがあったけれど、じっさいに見たことも味わったこともなかった。それが、今年5月にバルセロナにいったとき、市場で昭子が見つけて買ったので始めて味を知った次第である。塩がきつくて少し渋みがあり長年熟成したチーズのようでもあった。ボラの卵巣や、タラマグロの卵からも塩付けにし乾燥して作るのだそうで、イタリア語ではボタルゴ(Botargo)、中国では「烏魚子」と書き、日本語でカラスミと呼ぶのは唐の墨に似た形をしているからという説がある。

  からすみは古くからギリシャ・エジプトに産し、食膳に上がっていた。日本には江戸時代の初期に中国より長崎に伝来したといわれている。

  日本語では「鱲子」と書くのだそうで、こんな字は見たこともなかった。

 

中村省一郎 9-18-2009