柏の木-

 

前編の柏の木-1で、柏餅を巻く木の葉を捜して、インターネットで得られる情報をまとめたが、「サルトリイバラ、コナラ、ホオノキ、ヤブツバキ、ミズナラ、マテバシイで代用することが多いらしいです」という記述を紹介した。筆者は和菓子の作り方に関して多少の心得があるが、サルトリイバラ、ヤブツバキ、マテバシイ、ホオの葉を柏餅に使うとはとても考えられない。一方、ナラ、シイ、カシワの葉の形に関しては無知であることを認めないわけにはゆかないので、勉強のため、柏の木-1で出てくる主な木の葉の形と実の説明と写真をここに集めた。

 

柏餅の柏の葉は端が波状になっていて、その形が柏餅の特徴でもある。以下の写真を観察して次のことが分かる。椿の葉のように小さな葉を上下に二枚使うと、それはツバキ餅になってしまい、柏餅とはいえないであろう。同様に、シイのはには波状がなく、これも柏餅には使えない。カシワ(柏、槲、学名Quercus dentata)以外に柏餅に使えそうなのはナラとブナの種類であるようだ。しかしアべマキとかクヌギとなると、もし誰かにこのような葉で包んだものを柏餅だといわれても食べる気がしないし、まして、ホオやサルトリイバラとなると全く関係のない植物で、毒性もわからず、食べ物につかうというのは危険な話である。

 

マテバシイ ブナ科 学名:Lithocarpus edulis またはPasania edulis(同義語)

実は渋い味がなく、そのままで食べられる。葉の形は端のほうが波状になっていない。新宿御苑千駄ヶ谷門近くのマテバシイ。千葉県にもマテバシイの群落がみられるが、多くは、薪炭林や海苔栽培のため植栽・萌芽更新されたものである。今は海苔栽培に網を用いるが、以前は海苔をマテバシイの枝に付着させて栽培していた。

 

ツブラジイ(円椎、学名:Castanopsis cuspidata)は、ブナ科シイ属に属する常緑高木。関東地方南部以西から四国九州及び朝鮮半島南部に自生している。開花期は5月から6月。コジイ(小椎)とも呼ばれる。岐阜市市の木となっている。

2年成で、殻斗がどんぐり全体を包んでいるが熟すと3~4裂する。どんぐりの中では一番小さく丸いので「円らな椎=ツブラジイ」、または「小椎=コジイ」とも言う。ただ、春日山原生林で拾ったツブラジイはとても大きかった。
 奈良県内ではシイの実といえばツブラジイの方を指すことが多く、戦前生まれの方は、小さい頃よく食べたと懐かしんで話をしてくれる。もちろん生食でき美味しい。

 

ミズナラ   Quercus crispula Blume ブナ科 コナラ属

若いミズナラの森林

ミズナラはブナとともに冷温帯を代表する落葉高木。大きく成長し、樹高は30mに達する。南樺太、南千島~九州の冷温帯に分布し、ブナと混生したり、純群落を形成する。ブナよりもやや低海抜地にも生育し、やや分布域は広い。ブナは遅霜に弱いので、晩霜の被害が発生しやすい尾根筋、特に朝日が当たる東側はミズナラが優勢となりやすい。どちらかといえば、立地条件の良い場所をブナが占領し、物理的環境の厳しい場所でミズナラが優勢になる傾向がある。ミズナラの木はウイスキーの樽に使う。ミズナラのどんぐり  

盛夏の果実 若い果実

ヨーロッパナラ

ファイル:Quercus robur.jpg

 

アベマキ  Quercus variabilis Blume  (ブナ科 コナラ属

アベマキの葉(表面)

8月には、殻斗が開きはじめ、ドングリが見え始める 10月には、一部が落下し始める

クヌギ Quercus acutissima Carruthers  (ブナ科 コナラ属

クヌギ(成葉の表面はほとんど無毛) 若い果実:総苞片は反り返る 落下したドングリ

 ホオノキ(朴木)Magnolia obovata

 

神戸市北区 鍋蓋山北側(標高340m)

サルトリイバラ Smilax china (ユリ科 シオデ属

サルトリイバラ サルトリイバラの果実

ヤブツバキ   ヤブツバキ Camellia japonica L. ツバキ科 ツバキ属

ヤブツバキは東北以西の暖地に生育する常緑の小高木である。照葉樹林(シイ・カシ帯といってもよい)の代表的な種である。葉の表面にはクチクラが発達しており、光沢がある。花は冬から早春にかけて咲く。この季節は花を訪れる昆虫が少なく、花粉の媒介は主にメジロなどの小鳥が行っている。この季節、森を訪れると顔がヤブツバキの花粉で真っ黄色になっている小鳥を見ることができる。

ヤブツバキの花  2003/3/16
  神戸市北区 鍋蓋山南側(標高370m)

付録   食べられるドングリ

 

ブナ科のコナラ属、シイ属、マテバシイ属を通称、ドングリの木というが、一般に、果実を指すことばとしても使われている。ドングリ類の多くはタンニンが多いため渋く、そのままでは食べられない。
 シイ属のスダジイ、ツブラジイおよびマテバシイ属のマテバシイの果実はタンニンを含まず、そのままでも食用になり、多量にとれる点ですぐれた食品である。
 神社の境内でこれらの実を探し、拾う楽しみを経験した方も多いと思うが、最近の子供にも是非教えたいものである。マテバシイのドングリの味はシイ属のものより劣るが、比較的大きく(2~3センチ)、縄文時代の重要な食料源であった。また、野生動物にとっても好物である。