メイプルシロップとはどんな木の汁?

 

 

アメリカの朝食にはパンケーキ(ホットケーキ)が出てくることが多い。この上にかける蜜糖の汁がメイプルシロップである。本当のメープルシロップを作るのは、早春楓の木の幹に金属パイプを打ち込み、染み出てくる樹液をバケツに受け取り、これを煮詰める。コロンバスの近郊でも楓の木のある農家ではその作業をやる。

 

しかしどの種類の楓からメイプルシロップが取れるのかはよく分かっていなかった。以前に我が家にも5本の楓の木があったのだが、枝の折れたときなど、切り口から汁がながれだし、そこへ鳥がやってきては汁をなめていた。確かに、淡いあまみがあって、楓の樹液は種類にかかわらず甘いものかと思われた。それから何年も過ぎてしまったが、この数週間、樹木に関する疑問をいくつか解き明かした勢いで、メイプルシロップのことを調べる気になったのである。

 

メイプルシロップを採るのに使う木は4種類あって、

Sugar maple

Red maple

Black maple

Silver maple

であるという。どの楓の木がどの名に相当するかは、葉の形を比較すれば容易である。これらの中で、sugar mapleの樹液の糖分が最も高く、煮詰める作業がすくない。silver mapleではもっともありふれた楓で、今から思えば、我が家にあった楓はみなこれであった。だから、その当時我が家でもメイプルシロップの生産が出来たはずであった。

File:Acer saccharum JPG1L.jpg

Acer saccharum, sugar maple

Acer nigrum, black maple

 

Acer rubrum, red maple

 Acer saccharinum, silver maple

 

アメリカではメイプルシロップの表示に厳しい制約があり、Maple syrupと表示した製品にはまがい物の材料がほんのすこし混じっていても違法である。ただし、Maple-flavored syrupと書いてあればメプルが主であるが混ぜ物が入っていても許され、Pancake syrup などのように紛らわしい名前ではあるがメイプルとは書いてなければ何が入っていてもよい。

 

まがい物の製品の作り方はこうである。とうもろこしを煮てから麦芽の粉をまぜておくと、とうもろこしの麦芽糖が出来る。これをコーンシロップとよぶ。これにフェニュグリークを漬けておいた水を加えればよい。フェニュグリークとはカレイ粉の素材の一つであり、インド人が好んで薬味に使う。ヤギや羊に食べさせると乳がよく出るので、ギリシャローマ時代から牧草の草として使われた。グリークという名がその中にのこっている。乳が出るというのは、ヤギや羊に限らず人間の女性にもあてはまり、子供のいない婦人の胸を大きくするのにも使われる。糖尿病の治療にも役立つ。注文したパンケーキに糖蜜をかけてたべると、フェニュグリークのにおいをつけたコーンシロップだけでメイプルシロップは全然はいっていないかもしれない。

 

数ヶ月まえのこと、「正真正銘のメイプルシロップ」といううたい文句を掲げたビンをみつけたので、値段は普通の3倍くらいしたが買ってみた。さっそくホットケーキを作ってこれをかけてみたのだが、いつものメイプルシロップの味が全然しなかった。粘性も低くさらさら。しかし、文献によれば、本物はまがい物にくらべると粘性が低いと書いてある。以前はいつも偽ものばかりを食べさされていたのであろうか。

 

中村省一郎  11-23-09