フナ、モロコ、ナマズ

 

筆者は子供のころ、4歳からほぼ11歳までを旧満州の新京、現在の長春、で過ごした。家の近くに湖があり、そこでよく魚を取った。魚取の方法は竹を編んだちりかごを棒から吊るし、そこへご飯を匙一杯くらいいれておき、湖水に10分くらいつけて置いて引き上げると5~6匹の子魚が入っていた。フナとモロコはほとんどで、えびが混じることもあった。えびだけを取るときは、とんぼ網で杭などの表面にそって動かしてゆくだけで、小さなバケツに半分くらい取ることは難しくなかった。

 

家へもって帰ると、母親が小魚は煮付けにしてくれ、海老はゆでてから干し海老になった。干し海老は醤油をかけてから弁当のおかずにされる羽目になったが、頭に角が一本あって、食べるときにそれがうわ顎に刺さって、何度も痛い思いをした。

 

終戦一年たって日本へ引き揚げてきた。住まいは大阪の淀川からさほど遠くないところであったので、何度か魚とりを試みたが、淀川ではさほどとれなかった。それでも、とれた子魚が、引き揚げまえの中国で捕った魚と全く同じ種類であった。ドジョウやナマズも日本と中国では同じであった。

 

その後、中学か高校か覚えていないのだが、太古に日本と中国は繋がっていたということを学んだとき、この魚の知識、つまり日本と中国には全く同じ魚がすんでいること、と直感的に結びついて、どちらも納得がゆく思いがした。

 

大陸が異なると、淡水魚が全く異なることを身をもって体験したのは、米国に住むようになってからであった。米国の川や湖にはフナやモロコ、鮎はまったくいない。鯉は五大湖に繁殖しているが、これは東洋から移入されたもので、増えすぎて文句がでている。日本のザリガニは日本固有のものではなく、明治か大正時代にアメリカから誰かが持ってきたものが日本中に広がったしまった。

 

ナマズはどちらにもいるが、日本のは日本―中国古来のものであろうし、アメリカのナマズはこれまたアメリカ原産といわれる。アメリカのナマズは食べたことは何度もあるが、生きているのをゆっくり見たことはないので、同じかどうか分からない。少々困惑したが、文献によれば、ナマズというのは、何処の大陸にもいるようで、その種類もいまだ完全に分類されていないくらい多い。だから、それぞれの大陸で、よく似たのが太古から生息してきたのであろうということにしておこう。

 

中村省一郎  5-4-09