3.留学生のアメリカの大学院生活-博士課程

 

博士課程に入学を許された学生を待っているのは、まずQualifier Examinationと呼ばれる学力試験で1年に2度行われるから、博士課程に入って半年以内には受けなければならない。2度失敗すると退学となる。その内容は修士課程でうけた6科目ほどの授業の理解度を3~4日にわたる筆記試験でおこなわれる。試験官は授業をした教官とは限らないから、授業では習わなかったようなテーマの問題も出、授業内容の復習だけでは不十分で、幅広く奥深く知識を増やしておかなければならない。

 

博士課程に入っても、一年間は修士課程のときと同じくらいの割合の時間を授業に費やす。

 

博士課程での第二の難関は、Candidacy Examinationと呼ばれる各自の選んだ専門の分野の試験で、筆記試験と2時間の口頭試問から成る。筆記試験の問題はそれぞれの学生の指導教官を含む3~4人の教授で構成される試験委員会が作製する。多くの場合一週間くらいの期限が与えられ、答案は何処で書いてもよいしノートや参考書を見ることは自由である。口頭試問は、筆記試験が採点されその結果が委員会の教授に回覧された後、他の学部あるいは学科の教授の立会いのもとでおこなわれる。ここではどんな質問をするかはまったく試験官の自由で、公正であることだけが求められる。多くの場合、学生の知識の広さと理解の正確さが試され、いきなり何かの理論の式を書かされその展開を求められることも多い。この口頭試問は大きな試練で、半分くらいの学生は少なくとも一度は落とされ、中には二度目も失敗して去ってゆく気の毒なのもいる。立会いの教授は、その口頭試問が大学院の規則に従い、しかも公正に行われたかどうかを大学院の本部に報告する。

 

教授の方にしてみれば、よい学生はこの試験に合格して自分のプロジェクトの研究を進めてくれることを願っている。しかし博士課程の学生の中には、学科の試験の成績はよくても、基礎にどこか危ういところがあったり、新しい問題を自分の力で考えて切り開いてゆく素質のない人もいる。口頭試問は、そういう学生を切り落とすチャンスでもあるから、合格しなかった学生は涙とともに去るしかない。

 

この試験に合格した学生は、博士号候補者とよばれ、博士号をとるための研究の最終段階に入ることができる。

 

最後の難関は、研究の成果を出すことに成功し、博士論文をまとめることである。けっこう骨のおれる仕事で、研究がなかなか成功しないこともあるし、また2~300ページにわたる論文を間違いのない英語で纏め終えないといけない。最後に論文内容の口頭発表(一般公開)をおこない、Candidacy Examinationのときと同じ委員会の教授メンバーによる口頭試問と論文審査に合格すれば、黒いガウンを着て博士号授与式に晴れて出席することになる。

 

中村省一郎 

11-18-2010

インデックスへ戻る