5.アメリカの大学院課程を終えた留学生を受け入れる社会

 

アメリカの大学院課程を終えた留学生の大半は、アメリカにとどまることを希望し、実際に2000年ころまではなんとかアメリカの中で職を見つけることが出来た。ところが2000年以降はアメリカ内での求人が減り、特に外国人が職を見つけることが非常に困難になった。一方、中国インド韓国の各国でのアメリカで大学院課程を修了した人への需要が急激に増加してきた。これらの国から、アメリカ滞在の留学生を誘致に来るのである。だからアメリカに留学中に帰国後の就職を確保できるようになってきた。

 

これらの国の企業の技術者の経歴に関する情報からも、上記のことが裏付けられている。つまり高度な技術をもつ会社の技術者の多くは、アメリカの大学院課程の終了者である。

 

このように多数のアメリカから帰国した留学生を取り入れる企業の背景には、それらの企業の雇用制度が年功序列制ではなく、非常に柔軟な人事政策がある。年功序列に関係なく、能力があり最も適した知識や経験を持つ人材を見つけてきて、しかも高い報酬を与えられるような柔軟な人事政策は、新しいプロジェクトを短期間に成功させようとするときや、新しい事業を始めるときには計り知れない利点となる。

 

日本からのアメリカの大学院えの留学生が皆無に等しいのは、「日本の大学生は優秀であるから外国へ留学しなくてもよい」と言う人もいるが、これはとんでもない錯覚である。それぞれの国で大学を卒業してアメリカの大学院に入学してくる留学生の学力は、日本の最優秀な大学卒と比べて劣らない。アメリカの大学院へ入学して奨学金をもらうか、あるいは研究助手の指名を受けるためには、大学の成績とさらにアメリカの大学院に応募のための学力試験の成績が高くなくてはならない。一方、日本のよい大学は入学は困難であるが、いったん入学してしまえば、成績の良し悪しはほとんどとわれることなく卒業できる。このような状況の違いからみても、アメリカの大学院へ入学してくるアジアの国からの留学生のほうがはるかに必死であるといえる。

 

日本からのアメリカの大学院えの留学生が極端に少ない理由は、むしろ年功序列制度と、海外へ留学し学位をとったものを採用したがらない日本の企業の体質にあるのではないだろうか。日本の大学生にとっては、卒業後苦労して外国に留学し学位をとることに何の魅力も恩典も見当らないのである。

 

中村省一郎 

11-21-2010

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